西荻のこと研究所 メールマガジン71号 (2023.9.13)
地主から見た
「西荻北のご神木を伐採しないで」問題
「西荻北のご神木を伐採しないで」
西荻のことカフェにもポスターが貼ってあるこの問題。中央総武線沿いの荻窪寄り、電車からも見えるケヤキの木が伐採されることになり、住民が伐採中止を呼びかける署名を集めています。
西荻のこと研究所の定例会議でも話題に挙がりました。筆者は杉並区で代々農家、いわゆる「地主」といわれる家に生まれました。こうした売買に伴う保護樹木の伐採の問題は他人ごとではなく、今回この問題を「地主」側からはどのように感じるのかをレポートしてみたいと思います。
まず伐採の経緯について
東京新聞web版によると
1 杉並区は2005年、当時の所有者の同意を得て、保護樹木に指定
2 土地を相続した人が今年1月、土地売却を念頭に指定解除を申請
3 区は申請に沿って解除した上で、ケヤキを残してほしいというお願いの文書を渡し、売却先にも伝えてほしいと依頼
4 清水総合開発(東京)などが3月に土地を購入し、土地にあった建物の解体に合わせてケヤキも伐採すると決めた
とあります。
まずこれは言っておきたいのですが、わたしたち(地主)はできれば木を伐りたくはなく、できれば土地も売りたくないのです。
自分が子供の時から生まれ育った場所にあった大きな樹木は、自分よりも長くこの場所を見つめていた存在であり、大切に思っています。そういう気持ちがなければ大きな屋敷地と樹木を維持しません。今回の土地の面積であれば、百万円レベルの固定資産税に樹木の管理費(植木屋さんへの支払など)に数十万円/年間がかかります。地主はそうした費用を個人で負担して樹木を長く維持してきました。ではなぜ、思い入れのある土地や樹木を売却することになるのか。何回かの相続税を払い、もう自宅と屋敷林を売るしか手立てがないという、切羽詰まった状態で売却することが多いのです。しかも相続税は、亡くなってから10か月という短い期間で納税しないといけないので、マンション業者・宅地開発業者などに売却するケースが多くなります。
保護樹木制度の課題
私も10年ほど前に父から土地を相続した後に、区の職員の方から「保護樹木にしませんか?」と勧められた事があります。「相続などで指定を解除できなくなるとイヤなので指定しない」と伝えると、「売却などの理由がある場合は解除申請をすれば解除できます」と言われました。
実は相続した直後、「庭を見せてほしい」「調査をさせてほしい」という方が来て、それを断ったことがあります。するとその方は「保護樹木に指定しているだろう。税金なので公開する義務があるはずだ!」と詰め寄られた経験があり「保護指定」をお断りしました。正直な気持ちとして、年間8000円の補助金でこんな文句を言われたくないと思っています。保護樹木の指定解除についてのこのようなことが多発すると、「保護樹木」に指定されること自体が「リスク」であると考える地主や業者が増えることが心配です。
ここからは、筆者のこうした経験から、どうしたら良いと思っているかを書いてみたいと思います。今回の問題は「シンボリックな樹木を伐採する」ことが本質ではないと考えています。「何を残すかの基準がないこと」が問題だと思います。
周辺の市区の保護樹木制度についてHPで調べてみました。武蔵野市の保護樹木制度には「市へ土地の買取等の請求ができます」の一文が入っています。この場合は、市は予算の範囲内(または、予算案を議会に提出)で判断することになります。署名活動をしている「西荻ご神木けやきを守る会」のCHANGE.ORGのサイトや東京新聞web版でも、杉並区は保護指定解除が容易であることついて言及しています。武蔵野市のような買取請求の制度があれば、予算という制限の中で本当に保護すべきかどうかを行政と議会でチェックすることができます。
杉並区HPより 保護樹木等と寄付樹木・市民緑地
武蔵野市HPより 保存樹木の指定について
ただし、行政が土地を買取る場合、「公園」「市民緑地」などの目的で取得されることが多く、それ以外の目的で活用ができないことになります。「まちの更新」を考えた場合、公園以外の用途も必要です。樹木や緑地などを新しい価値として民間で利用できないかと考えていました。
「西荻ご神木けやきを守る会」の方とお話をした時に、伐採をしないで「ケヤキの大木のあるマンション」ができれば、マンションに新しい価値が生まれる。そうした価値を生み出していきたいと言っていました。その考えは私も同じであり大賛成です。
また、予算の関係で指定解除がされた場合は、民間での開発となり、結果として樹木伐採となってしまいます。樹木を残したことによって価値が上がったということが実績としてできれば、業者も今後、樹木の保護に目を向けるようになるのではないでしょうか。しかし、今回の場合、現状の法律や条例の枠組みでは樹木を残した形でのマンション建設は厳しく、もしできたとしても販売戸数が減るため、価格が大幅に上昇してしまいます。そうなるとこの樹木マンションはお金持ちしか購入できないものになってしまいます。大きな樹木があるという新しい価値を付けてかつ販売戸数を維持するにはどうすれはよいのでしょうか。
次回以降のメルマガにて、西荻のこと研究所の「建築・設計」関係者メンバーによる、この「西荻北のご神木を伐採しないで」問題への考えを掲載する予定です。
(野田栄一)
ブックレビュー
「はみだす緑 -黄昏の路上園芸-」
文・写真 村田 あやこ/デザイン・イラスト 藤田 泰実
(発行:雷鳥社)
庭木、生け垣、街路樹、保存林、美しく整えられた緑は街に彩り、潤い、安らぎを与えてくれます。もしもこれらの緑が一切無くなったらと想像すると息苦しくなりますよね。
でも、そんな素晴らしく理想的な緑環境はそこら中にあるわけではありません。それでも何か緑成分を欲して街歩きをしていると、かならずありますよね、アスファルトの隙間から無理矢理茎を伸ばして健気に咲いているタンポポ、だれが置いたのかガードレール沿いの植木鉢やプランター。案外、こだわりの季節の花が咲いていたりして。そんな、自然児のような緑や街の人たちが勝手に育てている緑には、何だか不思議で怪しい魅力が溢れています。
たまたま手に取った『はみだす緑 -黄昏の路上園芸-』には“そうそう、それそれ”とクスッと笑える緑がキャッチーなタイトルと可愛らしいイラストとコメントで紹介されています。文を書いた村田 あやこさんは自称「路上園芸学会」の会員(ご自分一人)を名乗り、個人宅や商店の軒先の鉢植え、舗装の隙間の植物といった、路上を舞台に繰り広げられる植物の動態を10年以上も勝手に愛で見守っているそうです。
本書では架空の主人公の目線で街中の“はみだす緑”を鑑賞しているのですが、読み進めると、いつのまにかその主人公が自分とリンクして、馴染みの街の緑を見る目線になっていました。素敵とは言い難いし、なんじゃこれもあるのですが、ちゃんとそれなりの世界観があって凄みも感じたりします。
本の帯には「鉢植えの背後には、人間ドラマがある。」と書かれていますが、はみだす緑を通して、街の人たちの活き活きとした姿も見えてきます。緑をはみださせることで自然と街に心を開いているのかもしれませんね。
街と緑との係わりは大袈裟なものでなくて良い、大小問わず自由で良い。愛ある “緑のはみだし”はきっと街の魅力を上げてくれるに違いないと感じさせてくれる1冊でした。
(平野 亜紀子)
燐光群
『ストレイト・ライン・クレイジー』
観劇記
今年7月に下北沢のザ・スズナリでお芝居を観た。
ニューヨークを作った男=ロバート・モーゼス。
燐光群の『ストレイト・ライン・クレイジー』は、数々のビッグプロジェクトを実現したモーゼスの栄光からの挫折を描いた作品だ。主人公ロバート・モーゼスは、斬新なアイデアと行動力で、がむしゃらに都市開発を進め、多くの功績を残し、時代の寵児として地位や権力を手に入れるが、変化した時代を認めず、新時代の多種多様な人々の生活があることに目を向けることはなかった。自分の信念を曲げず、強引に突き進む事で次第に皆から見放され、失意の晩年を迎えるところまでが描かれている。
モーゼスが活躍したのは1920年~1950年(30年間)。その10年後にはモーゼスの時代も終わり、手のひらを返したような人々の批判の渦に巻き込まれ、92歳で亡くなった。時代に求められ、時代に捨てられた彼の人生。まっすぐに突き進む計画と道路。
70年前の計画が動き出し、揺れている西荻窪の道路拡幅問題と重なった。青梅街道と西荻窪駅を結ぶ北銀座通り(都市計画道路補助132号線)のことだ。「やると言ったらやる!」「ひとりひとり意見を聞いていたら、意見がまとまらず進まないので聞かない!」…… ブルドーザーで強引に突き進み、その複雑で豊かで多様な生活を壊そうというのか? 時代は変化している。70年前の新事業も70年経ったら時代遅れではないか? 70年前、お上のいうことは絶対だ!の時代から、パワフルで、モーレツで、24時間働いて、大きな声を大きな声が被せて議論し、壊して建てて、湯水のようにお金を使って、またがむしゃらに働いて稼いで、自己啓発セミナー、偏差値教育…… こんな時代を経て、立ち止まることの大切さを学んだのではなかったのか? 豊かさとはなにか、もう一度考えたい。観劇後にこんなことが頭の中をかけめぐった。
(ガネーシャガル 松岡美由起)
ガネーシャガルのキッチンカー情報
いよいよムシカ号の季節!
ムシカ号の冒険 Vol.14
いよいよキッチンカー〈ムシカ号〉の季節がやってまいりました!
今後の予定をお知らせしたいと思います。見かけたら応援のお声かけてね~~~
西荻窪駅前
9月15日(金)・16日(土)・17日(日)11:00~21:00
JR西荻窪駅北口 みどりの窓口前
荻窪八幡神社の例大祭に合わせての出店です!
年に1度の神事ですが、なんと4年ぶりの開催です。街中に神酒所(みきしょ)が設けられ、お神輿も出ます。一緒に盛り上げたいと思います!
さんちゃConnect in アクティ三軒茶屋
10月7日(土) 11:00~17:00
アクティ三軒茶屋(世田谷区三軒茶屋2-41-2(西太子堂駅徒歩8分)
アクティ三軒茶屋(UR賃貸住宅)の団地内通路にて開催のマルシェ「さんちゃConnect in アクティ三軒茶屋」にムシカ号初出店です!
第14回すぎなみ舞祭
10月15日(日) 11:00~15:30
下高井戸おおぞら公園(下高井戸2-28-23)
子供達の汗と笑顔が眩しいダンスイベント、去年は出場者のネパールの子供達に囲まれ記念写真。美味しいと言ってもらったラッシー、いっぱい持っていきますからね~ イベント情報はこちら
すぎなみフェスタ2023
11月4日(土)・5日(日)11:00~15:30
桃井はらっぱ公園
すぎなみフェスタの出店場所はメインから少し離れてて分かりづらいけど、見かけたら手を振って応援してね! イベント情報はこちら
東京女子大学VERA祭
11月11日(土)・12日(日)10:00~16:00
東京女子大学内
まだ確定ではありませんが、東京女子大学の学園祭「VERA祭」にお声掛けいただきました。ムシカ号は学園祭がだ~いすき! 出店できたら嬉しいな~ イベント情報はこちら
いつでもできます
ニシオギ大調査
「西荻のこと研究所」で実施している「ニシオギ大調査」は、当初はイベント開催でしたが、現在では恒常的にできるようになっています。コースはAコースとBコースの2種類。
スタート地点から歩きながら、チェックポイントにてスマホで入力フォームにアクセス。それを繰り返すだけの簡単調査です。
コースガイドは「西荻のことカフェ」はじめ、西荻のいろんなお店のチラシラックなどにありますので探してみてください。こちらからPDFのダウンロードも可能です。
大好評発売中!!!
「ニシオギ空想新聞Vol.2」
(全16ページ/フルカラー)
発行日 2023年3月15日
販売価格 330円(税込)
西荻の道路や開発のことを扱った「ニシオギ空想新聞2」。ぜひ多くの方に読んでいただいて、西荻の人自身で西荻のことを考える機運となればと願っています。
販売店(5/31現在・順不同)
西荻のことカフェ/信愛書店/古書音羽館/村田商會/カフェインザラフ/暮らしのいろいろ ていねいに、/三つ枝商店/インド料理ガネーシャガル/カフェカワセミピプレット/今野書店/Loupe/Dawner/やきとり戎/アトリエハコ/サロン+アトリエポルカ/Title/BREWBOOKS/ランチハウス/数寄和
目次:
◯抄録 ことビルオープニングトーク 「西荻のこと、まちのこと、これからのこと」 饗庭伸・中島直人
◯報告 ニシオギ大調査 コース紹介・参加方法・分析座談会
◯分析 さとことブレスト
◯インタビュー 都市計画道路担当課長・星野剛志さん
◯4つの疑問と6つの提案
◯インタビュー 西荻の人に聞きました2
やきとり戎/JR西荻窪駅/関東バス株式会社 信愛書店/あなたの公差転/杉並区長/中野書店 区議会議員(1)/区議会議員(2)
◯ニシオギ空想新聞図書室
お問い合わせメール
info@nishiogi.org
なお、3年前の2020年1月に西荻案内所から発売されたVol.1はこちらから無料でダウンロードできます。そちらも合わせてぜひチェックを。
西荻シネマ準備室の貸出について
西荻シネマ準備室は、西荻窪からなくなって久しい「映画館」の復活を目標に、その実現に向けての調査研究・準備をするために設けられたスペースです!……が、ふだんは多目的スペースとして以下のようなご利用が可能です。
展示会○販売会○新製品発表会○ワークショップ会場○トークイベント会場○ミーティング・会議○撮影スタジオ○習い事○読書会○学習会○お教室○記者会見○オンライン配信会場 などなど
1時間2,200円 または1日22,000円(9-21時)
ご利用のお問い合わせ kabu@nishiogi.org
西荻のこと研究所
メルマガアンケート
メルマガ読者の皆様からの叱咤激励をいただきたく、アンケートを作ってみました。何度でも構いませんので、新しいご意見を思いつきましたら、ぜひ投稿してください
アンケートはこちらから
読みやすい杉並区議会議事録
平成30年9月から令和2年6月までの杉並区議会より、都市計画道路補助132号線に関するやり取りの部分だけを抜粋したPDFを作成しました。
どんなやりとりが行われているのか、ぜひチェックを。
読みやすいように縦書きでレイアウトしてみました。
以下よりダウンロードしてください。
https://nishiogi.org/wp-content/uploads/2020/08/gijiroku132.pdf
西荻窪の未来を考える会議 議事録
2020年7月17日と11月20日、西荻北銀座商友会の樋代会長と、杉並区の道路と都市計画と商店街関係部署(都市整備部土木計画課・市街地整備課・産業振興センター)の担当者と、西荻のこと研究所メンバーで会合を持ちました。その際の議事録をHPにアップしました。
この「西荻窪の未来を考える会議」は、将来的には西荻窪エリアに住む住民にもっと開かれたまちづくり会合の場を実現するべく、その準備として行っています。
西荻窪の未来を考える会議第1回
西荻窪の未来を考える会議第2回
研究所員をいっしょにやりませんか?
参加希望の方、まずはメールをお送りください。
info@nishiogi.org
西荻のこと研究所 メールマガジン配信
次号 2023年9月22日(金) 予定
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