2023年4月13日

西荻のこと研究所 メールマガジン65号 (2023.4.8)

投稿者: nishiogiorg

統一地方選挙2023
杉並区議選「官製ボートマッチ」中止の真の問題

前回(64号)、杉並区選挙管理委員会(以下、杉並区選管)の企画したボートマッチが中止になった経緯についてお伝えしました。そして、情報公開請求で入手したボートマッチの質問20項目の取り扱いに関して、杉並区選管から選挙が終わるまでは内容を公開しないようにという依頼文が添えられていたこともお話しましたが、今回、法律の専門家にその点について相談してきました。
 
■情報公開請求したボートマッチの質問20項目を公開することについて
結論としては、情報公開請求したボートマッチの質問20項目を「選挙管理委員会とは関係のない第三者が」公表することに何ら法的な問題はないとのことでした。杉並区選管からの依頼文※1:全文はこちらに書かれていたことを以下に抜粋します。

総務省からの令和5年2月14日付けの技術的助言(第 20 回統一地方選挙における啓発活動に係る留意事項について)を重く受け止め(ボートマッチ事業を)中止しました。…中略…。つきましては、区選管と関係のない第三者が、公開情報(質問20問) を使用して、ボートマッチやアンケート調査を実施された場合であっても、区選管が関与したものと誤解を受けるおそれがあるため、質問については「杉並区情報公開条例」に基づき公開いたしますが、ボートマッチやアンケート調査でのご使用をお控えいただくとともに、4月23日執行の区議会議員選挙が終了するまでは、他者への提供やSNS等での拡散についてもお控えいただきますようお願い申し上げます。(※1より引用)

杉並区選管からこのような懸念が示されていたため、我々もすぐにボートマッチの質問20項目を公表しませんでしたが、私たちは区選管ではなく、第三者ですので、それを明示したうえで、読者のみなさんにも一緒に考えていただくために、公開することにしました。さらに、以下、総務省から出された令和5年2月14日付けの「第20回統一地方選挙における啓発活動に係る留意事項について」の技術的助言(※2:全文はこちら 1ページ目 2ページ目)の書面を見れば、選管がボートマッチを行うことそのものには、課題や懸念があるものの、総務省は違法と断定しないということが分かります。

選挙管理委員会が主体となって「ボートマッチ事業」を行うことについては、以上のような課題や懸念があるものと考えています。なお、選挙の管理執行機関ではない民間団体が主体となって「ボートマッチ事業」を行うことについては、当該事業が選挙運動と認められる場合でも、選挙運動期間中ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動は原則自由に行うことができるところであり、公職選挙法上、直ちに規制されるものではありません。(※2より引用)

今回の杉並区選管によるボートマッチ事業の目的は、投票率アップ

前回も書きましたが、質問20項目は、私たち区民の生活に密接に関わるテーマが取り上げられており、構成としては

(1)テーマに対して賛成か反対かを問う質問
(2)テーマに関する現況解説
(3)テーマに関する背景


となっており、どれも簡潔で読んでいてとても勉強になりますし、行政の課題として、区民も区議も共に考えていくべきことだと思います。このような資料は、とても我々が簡単にできることではなく、選管から関係各課に問い合わせ、事実に基づいて背景を整理し労力をかけて作成してくださったものだと想像します。是非皆さんも読んでみてください。

(※3:全文はこちら

ここで、選挙管理委員会とはどのような位置づけの組織かを今一度確認しておきたいと思います。
選挙管理委員会は、
・区議会による選挙で選ばれた4人の委員により構成
・区長から独立した執行機関
・各種の選挙事務及びこれに関係のある事務を管理執行
で、公平・公正な立場にあります。 委員会の定例会は、毎月3回も開催されているそうで(臨時会は必要に応じて開催)、区のHPに選挙管理委員会の会議録があるので一度ご覧いただくと、実に真摯に議論を重ねていることが分かります。

今回の杉並区議選の投票マッチング事業は、選挙管理委員会が委員会の一つの役割である啓発事業として、若年層の投票率アップを目的に企画したものです。2019年4月に行われた杉並区議選は立候補者70名、投票率は全体で39.47%、うち20代の有権者の投票率は20.5%と他の世代の群を抜いて低く、同年7月に行われた参議院議員選挙の杉並区内の投票率52.63%と比較すると、かなり低くなっています。そもそもこの状態で公正な区政が行われる基盤づくりとしての選挙となっているのか甚だ疑問です。このような崖っぷちの状況下で杉並区選管が「投票マッチング事業」を企画されたことの意義を我々区民としても考え、次につなげていくにはどうしたらよいか、対話を重ねていきたいですね。
参考までに以下に、2018年6月と2022年6月の区長選の投票率比較、2019年4月の杉並区議選と同年7月の参議院議員選の投票率比較を掲載します。

・全体で前回の区長選と比較すると投票率がアップ。
・特に30、40代の投票率アップは顕著。
・投票率はアップしたものの20代の投票率は低い。
(図:杉並区長選挙H30・R4 世代別投票率比較)

・国政選挙(参議院議員)と地方選挙(区議会議員)の投票率の違いが顕著。
(図:杉並区議会選挙H31 世代別投票率比較)

※データ出典
杉並区統計書 平成30年(2018年)版 12 選挙・議会|杉並区公式ホームページ
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/toukei/toukei/h30/1048685.html
杉並区統計書(令和元年版) 12 選挙・議会|杉並区公式ホームページ
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/toukei/toukei/r01/1058129.html
杉並区統計書 令和4年(2022年)版 12 選挙・議会|杉並区公式ホームページ
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/toukei/toukei/r04/1086687.html
※グラフ作成:西荻のこと研究所 平野

総務省の見解にあるとおり、課題や懸念があっても総務省が違法と断定しないのだとしたら、その課題や懸念を払拭する質問の作り方・開示方法を仕組み化できれば、選挙管理委員会が行う地方選挙における「官製ボートマッチ」は、若年層の投票率を上げる有効な手段となる可能性は十分にあります。そして、政治に興味を持つ若者を増やし、ひいては区議に立候補する若者も増えることにつながるのではないでしょうか。専門職としての有能な地方議員を育て、健全な二元代表制(行政の長と議会議員をともに直接選挙で選ぶ制度)として、予算編成権も執行権もある首長との良い緊張関係を保ち、さらに党派を超えて行政課題について議論のできる地方議会運営ができるエコシステムを構築していく必要があるのではないでしょうか。

■全国の選挙管理委員会は今後、ボートマッチ事業を行えるのか
今回、総務省から各都道府県選挙管理委員会事務局に送られた事務連絡には、

本事務連絡は、地方自治法(昭和22年法律第67 号)第245 条の4第1項の規定に基づく技術的助言であることを申し添えます。(※2より引用)

とあります。この「技術的助言」によって、選挙管理委員会による投票マッチング事業は、事実上、日本全国の自治体がチャレンジしにくくなってしまいました。しかし、総務省が違法と断定しないのだとしたら、アクションを起こす自治体を市民が後押しして突破口を見いだすことができないか。そのためにも、次回は、杉並区の選挙管理委員会で投票マッチング事業についてどのような議論がなされてきたかを、公開されている議事録から振り返ってみたいと思います。

※1:杉並区選挙管理委員会「投票マッチング事業で予定していた質問の取り扱いについて(依頼)」(2023.3.1)
杉並区 政策経営部 情報管理課 情報公開係 にて情報公開請求

※2:総務省自治行政局選挙部選挙課、総務省行政局選挙部管理課「第20回統一地方選挙における啓発活動に係る留意事項について」(技術的助言)(2023.2.14)
選挙管理委員会議事録ファイルより
→杉並区 政策経営部情 報管理課 情報公開係 開架式で誰でも閲覧できます。

※3:杉並区議会議員「投票マッチング事業における立候補者への質問事項」(2023.3.2)
杉並区 政策経営部 情報管理課 情報公開係 にて情報公開請求

【関連情報】
党派を超えて行政課題について議論のできる地方議会運営を目指す第一歩として、4/8に保守・革新、現職・新人の立候補者の選挙運動員さんを招いて行うトークイベント「統一地方選挙をおもしろがってみよう! ~はじめての選挙活動」を行います。以下に案内がありますので、お気軽にご参加ください。

  (狩野)


統一地方選挙をおもしろがってみよう!
~はじめての選挙活動
4月8日18時スタート@西荻のことカフェ

(再掲)

2022年6月、187票差で新区長が誕生した瞬間、多くの人が選挙そのものに興味を持ったのではないでしょうか。選挙や選挙活動は「公職選挙法」という法律に則って行わなければならず、裏方の皆さんに支えられて行われる選挙活動は、知ると不思議がいっぱいで、「そういうことだったのか!」ということが沢山あります。
今回のトークイベントは、統一地方選挙を目前にして、以前の杉並区内で行われた選挙の記録を振り返りながら、選挙運動を行う上で基礎となるような知識を専門家から教えていただき、それを受けて、様々な政党や新旧候補の選挙運動員さんから、選挙の準備段階から当日までの裏方話をあれこれお聞きし意見を交わし合いながら、選挙をおもしろがってみようという企画です。聞いたことはあるけど実は意味が分からないなど、今更聞けない選挙のいろはも、どしどし聞いちゃってください。選挙や選挙運動に興味をお持ちの皆さん、是非お気軽にご参加ください。

開催日時:4月8日(土)18:00~20:00

内容:
はじめに ~選挙の基本のおはなし 30分
選挙運動の運動員さんに聞いてみよう! 60分
選挙に関する情報もちより 20分


参加費:ワンドリンクを頼んでください。
(フードの販売はないので、持ち寄りでお願いします)
場所:西荻のことカフェ(ことビル1階)


大好評発売中!!!
「ニシオギ空想新聞Vol.2」

(全16ページ/フルカラー)
発行日 2023年3月15日
販売価格 330円(税込)

西荻の道路や開発のことを扱った「ニシオギ空想新聞2」。ぜひ多くの方に読んでいただいて、西荻の人自身で西荻のことを考える機運となればと願っています。

販売店(3/31現在・順不同)
西荻のことカフェ/信愛書店/古書音羽館/村田商會/カフェインザラフ/暮らしのいろいろ ていねいに、/三つ枝商店/インド料理ガネーシャガル/カフェカワセミピプレット/今野書店/Loupe/Dawner/やきとり戎/アトリエハコ/サロン+アトリエポルカ/Title/BREWBOOKS/ランチハウス


目次:
◯抄録 ことビルオープニングトーク 「西荻のこと、まちのこと、これからのこと」     饗庭伸・中島直人
◯報告 ニシオギ大調査     コース紹介・参加方法・分析座談会
◯分析 さとことブレスト
◯インタビュー 都市計画道路担当課長・星野剛志さん
◯4つの疑問と6つの提案
◯インタビュー 西荻の人に聞きました2
やきとり戎/JR西荻窪駅/関東バス株式会社     信愛書店/あなたの公差転/杉並区長/中野書店     区議会議員(1)/区議会議員(2)
◯ニシオギ空想新聞図書室


お問い合わせメール
info@nishiogi.org

なお、3年前の2020年1月に西荻案内所から発売されたVol.1はこちらから無料でダウンロードできます。そちらも合わせてぜひチェックを。

選挙割すぎなみ
参加店募集中

杉並区議会議員選挙でも、おなじみ「選挙割」企画をするそうです。投票所で投票済証をもらって、いろんなお店のサービスが受けられます。ただいま参加店を募集中とのこと。
お店として参加するにはこちらのフォームからご登録を
※登録すると選挙割のウェブサイトやSNSでお店の告知をしてくれます。


西荻シネマ準備室の貸出について

西荻シネマ準備室は、西荻窪からなくなって久しい「映画館」の復活を目標に、その実現に向けての調査研究・準備をするために設けられたスペースです!……が、ふだんは多目的スペースとして以下のようなご利用が可能です。

展示会○販売会○新製品発表会○ワークショップ会場○トークイベント会場○ミーティング・会議○撮影スタジオ○習い事○読書会○学習会○お教室○記者会見○オンライン配信会場 などなど

1時間1,500円 または1日15,000円(9-21時)

(上記コロナ自粛期間特別料金は4月末まで。
5月から1H2,000円+税/1日20,000円+税です)

ご利用のお問い合わせ kabu@nishiogi.org


西荻のこと研究所
メルマガアンケート

メルマガ読者の皆様からの叱咤激励をいただきたく、アンケートを作ってみました。何度でも構いませんので、新しいご意見を思いつきましたら、ぜひ投稿してください
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読みやすい杉並区議会議事録

平成30年9月から令和2年6月までの杉並区議会より、都市計画道路補助132号線に関するやり取りの部分だけを抜粋したPDFを作成しました。
どんなやりとりが行われているのか、ぜひチェックを。
読みやすいように縦書きでレイアウトしてみました。

以下よりダウンロードしてください。
https://nishiogi.org/wp-content/uploads/2020/08/gijiroku132.pdf


西荻窪の未来を考える会議 議事録

2020年7月17日と11月20日、西荻北銀座商友会の樋代会長と、杉並区の道路と都市計画と商店街関係部署(都市整備部土木計画課・市街地整備課・産業振興センター)の担当者と、西荻のこと研究所メンバーで会合を持ちました。その際の議事録をHPにアップしました。
この「西荻窪の未来を考える会議」は、将来的には西荻窪エリアに住む住民にもっと開かれたまちづくり会合の場を実現するべく、その準備として行っています。

西荻窪の未来を考える会議第1回

西荻窪の未来を考える会議第2回


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次号 2023年4月14日(金) 予定


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