西荻のこと研究所 メールマガジン 38号 (2022.1.20)
ブックレビュー1
「銀座にはなぜ超高層ビルがないのか」
竹沢えり子著
行政マンと地域民と専門家の蜜月の歴史
杉並区職員の方々に愛を込めて贈りたい名著!
銀座の人々は、なぜ、どうやって、超高層ビルが立つ計画を止めさせたのか?
都市計画の専門家ではない著者が、事務局として、地域商店会+専門家と行政の戦いと協働のようすを記した20年間の記録です。ほんとうは、すべての方に読んで欲しい内容なのですが、全文を読むのがムズカシイ方のために、内容を抜粋します。千里の道も一歩から。。。がんばりましょう~。
杉並区の職員の方、読んでください~。
・銀座のまちの歴史
銀座のまちは、関東大震災、第二次世界大戦などにより壊されるがそのつど、最新の街並みに建て替えられ、更新されている。そのつど、店主は入れ替わり、現在ではほとんどの店主が銀座生まれではない新参者。老舗の旦那衆の街ではない。いつの時代も、新しい文化と新参者を受け入れる雰囲気。
・銀座の大規模開発のうごき
1997年、中央区の都市計画にかかわる職員(現副区長)が、商店会の要望を受けて、現在の法規により古い建物を建て替えられない窮状を、経済企画庁長官に、直訴。
その後、中央区と商店会は、正面から向き合う協議を重ねて、容積率、高さ制限などの地区計画をつくりあげた。このことを銀座の人たちは「地区計画「銀座ルール」」と呼んでいる。その後、松坂屋と森ビルの共同出資による200メートルの高層ビル案がわき起こる。再開発プロの専門家集団に対して立ち向かうべく、商店会は、銀座らしくあり続けるための手法を一緒に考えられる専門家を探し「銀座まちづくり会議」が発足した。
・「専門家」といわれる人たちとの関わり方
専門家の中心人物である蓑原氏は、「これは大組織型の大規模開発と自営業中心の街の大戦争です。銀座の人たちが中心となってしっかりとした組織をつくること、歴史の議論をしっかりしておくこと、問題意識をはっきりさせること、反対運動ではなく銀座の将来を考えるための会にすること。いかに銀座の人たちが価値観を共有できるかが勝負になる。」と、アドバイスしている。
そして、著者は、専門家に求めるのは、数十年先を見越したことを頭に入れたうえで、話をよく聞き、そして優先順位を付けること。地域は、専門家まかせ、行政任せにするのではなく、自分たちで意思決定できる覚悟と体制をしっかりとつくること、としている。
・地域と行政の思いをおなじに
前述の中央区職員の吉田氏は、「銀座には経済性の追求だけでなく、落ち着いたしっかりした部分があり、それが街の評価につながっている。それをどう守るかのルールづくりの議論の見通しがつくまでの最低一年間、区は大規模開発を凍結する」と宣言。その後、いくつかの計画案の検討を経て、建築確認申請の前に「銀座デザイン協議会」に意見を聞きに行く、と指導要綱に位置付けた。
・判断の基準は「銀座らしいかどうか」だけ
「銀座らしさ」とは何か?を明らかにするために「銀座デザインルール」を作成。事業者の創造性を信じ、事業者が提案する新しい銀座像や銀座らしさを受け入れながら、銀座らしくないもの、銀座に相応しくないものを指摘する前提となる考え方を理解してもらうことを目的としている。また、デザインルールは協議の経験と事例の積み重ねによって熟成させ、常に再考していくべきもの。
最後に、筆者は、「まちづくり」の活動のなかで重要なことは、地域のネットワークを組織化すること、専門家と長期間にわたりともに考え動いてもらえる契約をすること、地域と行政と専門家をつなぐ役割としての地域運営による事務局をおくこと、としている。
(石田)
ブックレビュー2
「やさしい猫」
中島京子著
東京女子大学出身の中島京子さんが、日本の入国管理制度の理不尽さとそれに翻弄される家族の姿を描いた一冊です。シングルマザーで保育士のミユキさんが年下のスリランカ人男性のクマさんと恋をして、語り手であり娘のマヤと3人で一緒に暮らそうとするも、クマさんの在留資格の期限が切れてしまい、入管施設に収容されてしまいます。
昨年、クマさんと同様に、スリランカ人女性ウィシュマさんが入管施設に収容中に亡くなった問題が記憶に新しいですが、恥ずかしながら私はこの本を読むまでその事件がどれほど酷い出来事なのか理解していませんでした。いつになったら出ることができるのかわからないまま収容され、命の危険な状況になっても外に出ることは許されない。なのに、収容されないための支援策や情報を手に入れづらい状況であること。読んでみて、日本国籍をもたない、一緒に働く人や同級生と突然会えなくなってしまうかもしれない恐怖を感じました。
入管施設に半年以上収容される人数は年間で600人以上にもなるそうです。これほど多くの人の平穏な日々が奪われる状況は、目に見えない災害が起きているようなものだと感じました。何より恐ろしいのはそうした実態を知らなかったことです。
女子高校生のマヤの視点で語られるので、前提知識のない私にも入管法や行政の複雑な構造がわかりやすく描かれていました。外国人の話だからと言って見過ごしてしまいがちな日本の問題を、自分ごとだと気づかせてくれる一冊です。
マヤは東日本大震災の時に小学4年生とあったので、今年20歳になるわたしと同い年くらいでした。「わかる~!」となるような節々もあって楽しく読めるので、同世代にはぜひ読んでほしいです。
(東京女子大学 伊藤)
西荻窪周辺まちづくりだよりNo.5
(杉並区 都市整備部 市街地整備課 拠点整備係 発行)
がでています
杉並区ホームページの「西荻窪駅周辺まちづくり」に関するページで、「西荻窪駅周辺まちづくりだより」の第5号のPDFがダウンロード可能になってます(令和4年1月発行)。
内容は昨年10月の「まちづくり懇談会」のまとめと、昨年12月に開催した「都市計画道路補助132号線パネル展示(オープンハウス)」の報告です。
内容は……
◯今後の進め方
◯これまでの取り組み経過
◯まちづくり懇談会の開催報告と
◯オープンハウスの開催報告
◯それぞれで出た意見の箇条書き
という構成です。
そして、重要情報。
令和4年2月5日(土)午前 に
第6回 西荻窪駅周辺まちづくり懇談会 を開催とのことです。
参加要件がふたつあります。
1つは(PDFに記載の)対象区域に住んでいる、営業している、土地建物を所有している、対象区域の商店会・自治会・町会に所属している方
もう1つは、この懇談会に継続参加できる方
です。
また、参加要件を満たしていなくても傍聴はできるとのこと。
参加の場合も傍聴の場合も、コロナ対策で実地での開催のほか、zoomでの参加が可能。
希望の人はお早めにPDFに記載の連絡先(杉並区都市整備部・市街地整備課・拠点整備係)までご連絡を。
西荻窪駅周辺まちづくり
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/machi/machidukuri/1034440.html
まちづくりだより5号PDFへの直リンク
https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/034/440/mtayori5.pdf
西荻シネマ準備室の貸出について
西荻シネマ準備室は、西荻窪からなくなって久しい「映画館」の復活を目標に、その実現に向けての調査研究・準備をするために設けられたスペースです!……が、ふだんは多目的スペースとして以下のようなご利用が可能です。
展示会○販売会○新製品発表会○ワークショップ会場○トークイベント会場○ミーティング・会議○撮影スタジオ○習い事○読書会○学習会○お教室○記者会見○オンライン配信会場 などなど
1時間1,500円 または1日15,000円(9-21時)
(コロナ自粛期間特別料金です)
ご利用のお問い合わせ kabu@nishiogi.org
西荻のこと研究所
メルマガアンケート
メルマガ読者の皆様からの叱咤激励をいただきたく、アンケートを作ってみました。何度でも構いませんので、新しいご意見を思いつきましたら、ぜひ投稿してください
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読みやすい杉並区議会議事録
平成30年9月から令和2年6月までの杉並区議会より、都市計画道路補助132号線に関するやり取りの部分だけを抜粋したPDFを作成しました。
どんなやりとりが行われているのか、ぜひチェックを。
読みやすいように縦書きでレイアウトしてみました。
以下よりダウンロードしてください。
https://nishiogi.org/wp-content/uploads/2020/08/gijiroku132.pdf
西荻窪の未来を考える会 議事録
2020年7月17日と11月20日、西荻北銀座商友会の樋代会長と、杉並区の道路と都市計画と商店街関係部署(都市整備部土木計画課・市街地整備課・産業振興センター)の担当者と、西荻のこと研究所メンバーで会合を持ちました。その際の議事録をHPにアップしました。
この「西荻窪の未来を考える会」は、将来的には西荻窪エリアに住む住民にもっと開かれたまちづくり会合の場を実現するべく、その準備として行っています。
西荻窪の未来を考える会議第1回
西荻窪の未来を考える会議第2回
研究所員をいっしょにやりませんか?
参加希望の方、まずはメールをお送りください。
info@nishiogi.org
西荻のこと研究所 メールマガジン配信
次号 2022年2月11日(金) 予定
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