2020年7月29日

西荻のこと研究所 メールマガジン 05号 (2020.07.15)

投稿者: nishiogiorg

04号のメルマガに掲載した座談会の続きです。03号メールマガジンで発表されたアンケート調査の結果をふまえ、「西荻のこと研究所」が今後どのように活動していくかを考えるべく、研究所メンバーによる座談会を実施しました。(2020年6月17日収録)

西荻のこと研究所座談会(後半)

まちの遷移とともに
西荻のこと研究所ができること

石田 「西荻のこと研究所」で、都市計画道路に立地していても家や店を残すことができる権利や、残るための方法を考えていくこと、一緒に考えて行くことが大切なんじゃないかと思います。
平野 道路のことばかりを追求するのではなく、もう少し「まちづくり」の視点を取り入れたいです。「まちづくり」という点を強調して、土木関連の部署だけじゃなく、まちづくりに関する部署にも地道にアクションしていくのがいいと思います。
奥圭 移転や解体が進んでくると、事業予定地の空き地ばかりになることも予想される。そういう遷移期における空き地だらけの状況をどうやったら回避できるのか。そこで、新たな場所を探して紹介していくだけではなくて、その事業予定地を期間限定で活用して商店街の雰囲気を持続させるような方法を提案できないでしょうか。ほかの都市計画道路でそういう事例があると聞いています。その空地を使って、期間限定でイベントをやったりとか。キッチンカーの出店場所に開放するとか。たとえばそれの維持管理を西荻のこと研究所でできるんじゃないかな。
福田 その次には、建物を実際建てる時にも関係を保つことができたらいいんですよね。
野田 そこでできるのが「事例紹介」だと思います。たとえば吉祥寺の空洞化しているアーケードの話はとてもわかりやすかったですし、下北沢の線路跡がどう変わったかとかも。あと、今西荻で営業している人たちの中でも、実はすでに実店舗をそんなに重視してないというようなことなども紹介できる。そうすれば、地権者の方にもわかってもらえると思えます。メルマガなどでそういったことを書いて、昔のようにマンションを建てても人が入らないということを、事例紹介をしながら説明出来ると思う。
石田 どこかの地方の事例ですが、小さなお店を入れるために賃貸物件の部屋面積の上限を決めているところがあったと思います。建物を建て替える時は、1階に店舗を作らなくてはいけなくて、その店舗部分も月5万とか10万程度で貸せるぐらいまで小さくしないといけない。例えば、50平米・15坪だったところを、それをさらに2分割する。そうすると、坪単価じゃなくてちょっと割高になりますよね?
福田 両方入れば、収入が上がりますね。そこのテナントの管理を我々でやれば大家さんにとってもメリットがあるのではないでしょうか。
野田 大家の立場からすると、なるべく大きいところを1つで借りてくれる方が安心。テナントが2軒だと手間も2倍になります。だから、それを管理してくれるNPOや地域会社があると安心です。そこのスペースを一括で貸し、どう分割するのかは任せられるような信頼関係が持てるところがあると、大家さんの負担が軽くなる。
平野 そこにたとえば洋服屋さんが3軒入るとする。大家さんには、一括で賃料が支払われる。それでバッグヤードを共有することにして家賃を抑える。シェアハウスのような仕組みを作って提案する。店舗ごとに壁で区切ると、内装や設備投資等に費用がかかってしまうけど、この仕組みだとフレッシュな店舗さんが入り易く、すごく良くなりますよと。西荻のこと研究所で管理まで行うのが大変だったら、仕組みだけでも提案してみたいですね。
狩野 昔の市場みたいなかんじ。
平野 このやり方で何戸かは入れることはできるんじゃないかな。それがまちづくりにも繋がる。
福田 僕らが法人化して、大家さんから空き物件を借りて、それをお店をやりたい方にまた貸しする。
平野 サブリースみたいなやり方ですね。
福田 飲食でも最近は、フードコートにするのはありますね。小さなお店をたくさん作って、真ん中で共有の座席を作る。
平野 賃料のバリエーションもつくって、たとえば一週間単位でとか、何日と何日だけ、とかだと店舗のバラエティーが出てくる。
狩野 いずれにしても、新しいものを建てたら今の賃料では貸せないだろうから、そういう工夫が必要です。そこを地主さんに解ってもらいたいですね。
奥亜 西荻でも、新築ビルはかなり苦戦してます。ようやく入って新規オープンしてもこのコロナでテイクアウトのみとなりますます大変。高い賃料はどうしても商品に乗せることになる。そういう割高感に西荻の人は敏感です。だから建てる時から、入居テナントが苦労しないような設定を考えたほうがいいし、その無理のなさがまちの雰囲気をよくすると思います。
善福寺川沿いにこの春、Cocoonという素敵な保育施設がオープンしました。そのすぐそばにあるカフェのカワセミピプレットと合わせて、そういうスポットがエリアの価値を押し上げている。
狩野 川沿いがいい雰囲気ですよね。
奥亜 収益がどうこうじゃなく、そういう事例や価値観を発信して、みんなが意識するところにのせていくのが、私たちがすることかなと思います。
平野 多様性に耐えられる建物、時代に応じて変えられる建物のほうが長生きできると思います。吉祥寺でも建物を新しくするとそのあと全然入らなくなった店舗を見かけます。家賃が高くなったためではと考えらます。それより、ちょっと古いところを少し改築するくらいの方に人気がある。柔軟で多様性に耐えられる建物の方がうまくいってる気がします。見る側には今度は何ができるんだろうという楽しみもある。一方で新築なのに入らないのは見ていても楽しくないし、いつまでも空店舗であることが不安になってしまいます。寂しい雰囲気になってしまうんですね。 多少古い建物であっても、いい意味での新陳代謝が常に行われているまちのほうがいい気がします。

善福寺川沿いにできたcocoon(青い建物)
「西荻のフードコート」といえば、神明通りのあさ市、こけし屋の朝市、柳小路の昼市(写真は神明通り)

次の担い手を育てる

松本 道路ができて、新しいビルがいっぱい建っても、そこに入るプレイヤーがいないかもしれないということが、他の事例からもこのアンケート結果からもシミュレートできますよね。そこで次のプレーヤーを十年かけて育てるというのが、私たちができることなのではないでしょうか。道路計画により収用され建物を壊す予定のところを期間限定で安く借りてもらえるような仕組みを作り、10年かけて商売の基盤を作ってもらい、周辺に新しい建物ができた時にも商売していける人たちを「街全体で」育てる必要がある。それは行政にはできないことだけれども、行政の進める道づくりと共に街の賑わいの確保を置き去りにしてしまうと道路計画が進む中で空洞化していく街からは自然と街の魅力が消えていき、今の西荻がいいと思っている人たちは西荻に来なくなってしまいますよね。
今本当に、いい話がいっぱい出たと思います。それぞれの課題に対応した案を作って、それを行政に具体的に提案するところまで話をして、その上で地権者さん達に提案する。こちらはオーナーや地権者さんとはつながりがあるけれども行政ともコンセンサスが取れているとオーナーさんやテナントにとっても安心ですよね。将来、大きな建物を建てるにしても、いわゆる新築空家になってしまわないようにするために、期間限定で使える場所も作って街のプレイヤーと賑わいを担保していく。私たちが言っていくのでもいいと思うのですが、そこは杉並区の方と一緒にやっていく方が話が早い。行政に対しては、みなさんの作っている提案を、課題と事例とでまとめて、このアンケート結果を踏まえて、1度お話しするのはどうでしょう。
空き店舗に関して、沿道の地権者さんと話をしたことがあります。その方はもう早く売りたいという考えの人。3分の1が計画線にかかっていて、そこを売り、残りの土地で建て替える。で、そこにどんなものを建てますか?って聞いたのですが、まだ考えてなかったんです。でもいつか必ず考えなきゃいけない。売った後では遅いですから。ただ、残りの土地をどうするかについて杉並区が相談をもちかけるようなことは無いでしょうね。そこで私たちがどうしましょうと声をかける。立退きたい人と、残りたい人を繋ぐそんな役割ができると良いと思います。

大家と店子は協力しあえる立場

松本 今後、テナント貸しをしている大家さんが店子に出てもらうにあたってのトラブルも予想されます。本来のルールに従えば、杉並区がやればいいことなのですが、そういうときの相談窓口とか。
奥亜 大家さんと店子で話し合うんじゃなくて、大家さんと行政、店子と行政、それぞれで話し合いをするべきところなんですよね。
野田 そこが、行政側のうまいところです。「大家さんの方で言っていただけますか」みたいな感じで、聞かれないことには答えない、というところがある。
狩野 店子にも権利があるんですもんね。大家さんにしても店子にしても、きちんと期日が決まってないことが不安。スケジュールがよくわからないから、自分が責任を感じてなんとかしなきゃと先にアクションを起こすケースもある。それはすごく不幸なこと。地権者と店子は相反するのではなく、本当は協力して区とどういう交渉をすべきかと意見交換をするような関係性にあった方が幸せだし、本来はそうあるべきじゃないかという気がします。いつぐらいまでに出て行くかとかも含めて。
店子が出たあと、工事が始まるまでの期間で、その間だけのポップアップ店舗で商店街を盛り上げましょうかとか、誰かがチャレンジできるような限定店舗にしましょうねとかを、大家の意向と店子の意向を一つ一つ聞いて、工事のスケジュールをにらんでパズルしながら、我々がコーディネイトしていけると一番いい。立ち退いたところが更地になって柵で囲われて、埃っぽい街の状態が当分続く、みたいになるよりも、店子さんと地権者さんを繋ぐことで、更地と柵の状態にならないようにしたいですね。

拡幅される北銀座通り

工程表をつくる

石田 工事がどういう順番で進んでいくのか。道路工事は用地買収が全部済んでからスタートするっていう変なルールがあります。買収が済んだところは、解体されて更地になってガードレールで囲われます。そして隣が保留をしてると、いつまでもそのガードレールのままになる。それをもう少し違うものにしたい。
今までの話はオーナーと賃借人の間だけの関係だけれども、たとえば1ブロックごとに小さなパターンを考えていくというのは? ある1ブロックが合意できたら工事をし、それがずっとつながっていけば。そしてできれば端から。端からやっていけば、実際に重機が入る工事はもっと短くて済むはずなんですよね。
松本 オーナーさんは、建物の屋根が飛んだなどでそのたびにお金がかかるのが不安なので、古い建物は壊してしまった方が安心だと考えますが、もしも西荻のこと研究所で管理・借り上げのような形を取れればオーナーさんも安心して活用させてくれると思います。更地になったとしても拡幅までの間は何かで利用できる。例えばポケットパークにするとか、キッチンカーを置けるようにするとか、そういった形で活用していく。建物が使えるうちはその収益の中で修繕もする。必要であれば壊すし、その間活用できるものは街のために活用させてくれと。それはオーナーさんひとりひとりではハードルが高い。管理費とかを考えると難しいと思うんですけども、そこを西荻のこと研究所で管理運営する。行政もできないしオーナーさんもできないところなので、意義があると思います。
鈴木 ちょっと偏った見方になりますが、オーナーと店子がもめている事は区にとっては都合が良いですよね。勝手にもめて、店子さんが出ていって、空き店舗になればオーナーも困る。区は用地交渉が容易になりますよね。
また、アンケートの感想として、工程がよく分からないという意見があるということは、何年後にどういう状況でいなければならないのかが不安な方がいらっしゃるということだと思うんですけど、私たちがこの「工程表」を作っちゃってもいいのかなと思いました。端っこからやっていくのか、このエリアは何年後に建物を壊すとか、そういう工程表を提案してもいいのかなって。土木系の段取りがわからないのですが、ウォーカブルシティ提案の前に工程の提案というのがまずできることなのかなって思います。そして、借り上げ店舗や工事によって生じる空き店舗の対策として、このメンバーで一度にお店と場所のマッチングをさせるのは結構な労力が必要になる。今後メンバーが増えても倍の人数にはならないだろうことを考えると、工程表があって5店舗くらいずつ斡旋してっていうロジックが現実的なのかなと思うんです。ちょっと工程の絵を書いてみたいなと思います。
石田 並行でできると思います。私たちの中に不動産の専門家がいるし、並行で動きながらスタディしながら。とはいえ、土木専門じゃないからインフラをどうするのか、っていうのもありますが、それ勉強しながら。
狩野 スケジュールの提案のように見えて実はまちづくりのプロセスの提案そのもの。具体的な情報を収集していく中でリアルなプロセスに近づいていく。最初はかなり架空かもしれないけど、一つの提案をするのはすごくいいと思います。
小さなピースを一つ一つはめていくこと
狩野 たとえば、早く残地を売りたい人に、こと研でいい人を連れてくるからというマッチングも含めてやれたらいいですね。
奥亜 お店を出したい人、キッチンカーで販売を始めたい人、そういう小さなピースがうまくはまってくるといいですね。そういう情報を日々拾いながら、コミュニケーションしていければいいな。それが西荻のこと研究所でできれば。拡幅は進行する出来事の一つではあるけど、途中の事例としては悪くないようなことを、まずはなにかひとつ進めて、それを発信できたらいい。
福田 実際に一つプロジェクトとしてやれば、他に応用が効くのかなと。それに続けて、2つ3つと繋がっていくと面白いですね。
平野 横浜の元町商店街はけっこう事例紹介されるのですが、戦後すぐの頃から商店街組織を発足し、単純に道路の問題としてではなく、まちの賑わいとか活性化という観点で当時から行政とずっとやり取りを続けて来て、あの素晴らしい元町商店街ができたようです。新しいことはどんどんチャレンジするのがいいんじゃないかと。その積み重ねが大事だなと思います。
西澤 まちづくりルールを考えるのもいいのかなと思っています。杉並区のホームページを見ると、富士見ヶ丘でまちづくりルールの登録をしていて、こういうのを登録していくのも案としてあるのかなと思います。見ると、「先に実施した住民および商店街のアンケート調査において賛同得られたから定めました」と書いてある。
石田 そうなんですよ。先進事例ってみんなそうやって始まってる。
西澤 そういう小さなことから始めていけばと思いました。

井荻町時代の西荻は、町全域での区画整理に着手し短期間で完成させた。
当時の町長・内田秀五郎の銅像が善福寺公園にある。

キッチンカープロジェクト始動!

西荻北、関根橋のそばにあるインド料理ガネーシャガルの松岡美由起です。

新型コロナ感染症の流行が本格化し出した頃、
ガネーシャガルから独立した外国人スタッフから電話がかかって来るようになりました。

中にはほとんど日本語を話せない人や、
以前スタッフだった人の奥さんの友達という女性などからも。
〈日本人〉というだけで私を頼ってきたのです。

ほとんどが収入が無くなってしまった事への不安で、
『私、どうしますか!?』と拙い日本語で訴えますが、
先が見えない今どうしてあげることもできず、たいしたアドバイスもできず、
がっかりさせて電話を切ることに……

ホント、自分にガッカリだ〜〜😞

……と、他人事ではない!
西荻窪の店も、巣立って行った人たちの店もコロナの打撃を受け、
「いつまでもつか……」という状態、

借金をしなければ……まずは協力金の申請か……
店は短縮営業か? 休業か? スタッフの通勤は大丈夫か……
そもそもお客様は来てくださるのか? マスクがない? 消毒薬が高額?
なんとかしなければ……なんとかしなければ……

とそんな時[業態転換支援事業で最大100万の助成金]を見つけたのです。
都が飲食事業者に向け新たにテイクアウト、宅配、移動販売を始める取り組みに助成するというのです。
これだ!この助成金を利用させてもらい移動販売をはじめよう!

そうだ! キッチンカーを作ろう!

つづく

11月末までの期間限定ですが、都立公園内で飲食店営業(キッチンカーの利用を想定とのこと)を許可するとのことです。善福寺公園も対象に入っていました!
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/07/09/22.html


西荻未来の羅針盤 第4回
となりまちはウォーカブルシティでした

先日、西荻のこと研究所メンバーで4月に開かれた街「下北沢線路街」を視察してきました。
この街は小田急線の地下化によって生まれた全長1.7Kmの線路跡地を‟みんなでつくる あたらしい「街」”をテーマに支援型開発をしているのが特徴的です。
そして、駅前という立地ながらも高密度なビルを建設するといった開発ではなく、平面的で隣接する既存の商店街との共存共栄を非常に意識されていることを感じます。

支援型開発の街づくり

線路街の中にBONUSTRACKといったエリアがあるのですが、ここには2階建てで簡素ながらもモダンな建物が点在しています。1階に店舗で2階は住居の様な構成で昔の商店長屋の現代版と言っても良いかもしれません。建物が簡素であることもあり店舗の内装は手作り感があって、それぞれの個性を表現しやすい様に、そして起業者の出店コストを抑えられるように工夫されています。
そう言えばニシオギ空想計画で「セルフビルド」をテーマに考えられているものもあった様な…

下北沢と西荻窪で共通しているのが、個性や文化を大切にして長く続けている店が多いことかと感じます。実際のところ、これらの頼もしい店も、ピカピカでハイレベルな建物での継続的な営業は、コンセプトやコストといった様々な理由で難しい様です。
街の中に、味のある古い建物をできるだけ残す街づくり≒開発も商店そして街を利用する人々への支援ではないでしょうか?

研究所員をいっしょにやりませんか?

今回の勉強会で下北沢の方々へお話を聞く機会があったのですが、印象的だったのは自分たちの街に興味を持ち大切に思っている人が非常に多いことです。
何かしらの運命で西荻窪と出会った訳ですから、まちの変化に興味を持ち、関わって行きませんか?このメールマガジンのコメントをすることからでも良いのでご参加をお待ちしております。
今後も各種勉強会やイベントを予定しています。
(特に次世代の西荻窪をつくる「働き盛り世代」の方々のご参加大歓迎です!)

参加希望の方、まずはメールをお送りください。
info@nishiogi.org

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次号 8月5日(水) 予定
キッチンカープロジェクト 2
西荻未来の羅針盤 5
ほか

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