西荻のこと研究所 メールマガジン97号 (2025.6.13)
『西荻地域の整備効果』を読んで
2025年5月、杉並区都市整備部都市計画道路担当より、『西荻地域の整備効果』という報告書が公表されました。
この報告書では、西荻地域を通る都市計画道路「補助132号線」の整備によって期待される効果について、整備の基本目標である「防災」「環境」「暮らし」「活力」の4つの観点から、25の指標を設定し、できる限り数値に基づいて検証が行われています。
今回の効果検証では、「補助132号線」の整備によって得られる11のポジティブな効果が提示されています。
【防災】
① 防災拠点へのアクセス性向上
② 災害時の帰宅困難者の対応
③ 燃えにくいまちづくりの推進
④ 救急医療施設へのアクセス性向上
【環境】
⑤ 自動車からのCO₂排出量削減
⑥ 植樹等による緑の増加
【暮らし】
⑦ 救急医療施設への等時間圏域の拡大
⑧ 歩行者・自転車の安全確保
【活力】
⑨ 交通結節点の形成と連携強化
⑩ 高速道路ICへのアクセス性向上
⑪ 南北道路網の強化
各項目の詳細については、以下のリンクからご覧いただけます。
資料:『西荻地域の整備効果』
https://www.city.suginami.tokyo.jp/documents/20972/nisiogi.pdf
報告書冒頭において、これはあくまで議論のための一つの資料であり、議論の全てではないと書かれてはいますが、私は本報告書は住民の道路整備に対する不安には応えられていないと感じました。
数字で効果を可視化できる項目については、今回の通り、ポジティブな成果が期待できるでしょう。
しかし、多くの住民が気にしているのは、「道路整備によって、西荻の街がどのように変わってしまうのか」という点です。
仮に防災機能や交通利便性が向上したとしても、もし西荻らしい個人商店や個性的な飲食店が失われてしまったら、それは「私たちの知っている西荻窪」ではなくなってしまいます。
今回の報告書は、行政の権限でコントロール可能な範囲で、できる限り事実に基づいて整備効果を示した点で、非常に貴重な資料です。
とはいえ、次のステップとして、
・例えば整備後の道沿いの建物に一階部分を「店舗・飲食・サービス業」とする条例を設けた場合、どのような街づくりが可能か
・拡幅後の道路デザイン(幅・色彩・植栽・ガードレール等)に、どのような工夫が加えられるか
といった、住民が本当に知りたい「まちの未来の姿」についても、ぜひ資料として示していただきたいと願っています。
もちろん、条例制定などは不確実な事項のため、行政にとっては作成が難しい部分もあるかもしれません。
しかし、事実ベースの検証に留まらず、「街をどうデザインするか」という視点まで行政が勇気をもって踏み込まなければ、行政と住民の間の議論は深まらず、現在生まれている対話の場も生かされなくなってしまいます。
「今の西荻の街の姿を守りたい、より良くしていきたい」という住民の想いと、行政の視点が合致したとき、西荻地域の発展に向けた力強いスタートラインに立てるのではないでしょうか。
これからの議論が、そのような未来につながっていくことを心から願っています。
(杉浦岳志)
6月7日
第4回(仮称)西荻デザイン会議
開催速報

少し汗ばむ心地の良い陽気。
桃井第三小学校の体育館で第四回の「(仮)西荻デザイン会議」が行われました。
午前中に同会場で杉並区主催のパネル展示が開催。
展示は「都市計画道路の基礎情報と西荻地域での整備効果」+「これまでの(仮)デザイン会議の活動」といった内容。
会場には道路部門の職員もおり、質問などの対応をされていました。
参考:
https://www.city.suginami.tokyo.jp/s098/20972.html
あくまでも、現在区が提供できる情報を公表するもので、今後の議論に際しての基礎情報としてほしいのだという事でした。
ただ、専門的な内容にもなるので、これをどう理解していいか丁寧な解説が必要だなぁといった印象をもちました。デザイン会議の勉強会が必要ですね。区でYouTubeでの解説動画とかつくらないかしら。(あるいはこと研と一緒にどうですか?)
今後もこう言った展示を発展させて、参加者もパネル展示がしていけると良いよねという雑談も。
午後からは本会が開かれ、前半に情報提供、後半にグループ討議という形で進みました。情報提供では、国士舘大学の寺内義典さんと、株式会社GENプランニンの奥村玄さん、お二方の先生からそれぞれ「道づくりとまちづくりのお話」と「下北沢の事例のお話」を頂きました。どちらも132号を考えるうえで大変興味深く、もっと深く伺いたい内容でした。
せっかくのお話だったのに収録もされず、今後公開される予定もないとのことだったので、今後は情報を残して、今回参加できなかった方やこれから参加してくれる方と共有できると、より良いと思いました。
休憩後、後半は
① 西荻で取り組みたい、参考になりそうなこと
② 部会活動に向けたテーマや進め方
が話し合われました。詳しくは後日、参加したメンバーの報告と感想を頂きたいと思います。
閉会後も雑談の時間が設けてあり、参加者同士の情報交換や行政職員との個別での対話が見られました。意外とこういった風景が、まちの井戸端会議のようで良いですね。片付けも残られた皆さんで行っていました。
年齢層の若い方の参加者も増えてきている様に見受けられました。今後10代20代の方たちも参加したいと思えるデザイン会議になっていけるように育んでいきたいですね。
そうそう、用意して頂いていたお茶とお菓子、ごちそうさまでした。
(石井祐樹)

ぶらり西武線の旅①
上井草 編
杉並区には中央部に「JR中央線」と「地下鉄丸ノ内線」が、また、南側には「京王線」が走っています。実はもう一つ北側に「西武新宿線」がひっそりと走っています。私(筆者)は西武新宿線の沿線「上井草」に代々住み着いています。緑や農地が多い西武新宿線沿線を私は「杉並区の秘境」と勝手に宣伝しています。今回は少し西荻を離れてこの沿線をぶらぶらして私が面白いと思うところを見てゆきたいと思います。
杉並区内の西武新宿線の駅は3駅。東側から「下井草駅」「井荻駅」「上井草駅」。杉並区が出来る前の井荻町時代に当時の町長「内田秀五郎」(一部の人にはおなじみ)が設置をお願いしてできたと言われています。今回は一番西側「上井草駅」をぶらぶらしてみましょう。

上井草駅は、今では珍しいホームを繋ぐ高架がない構造になっていて、踏切を渡って「上」「下」線のそれぞれの改札口に行くことになります。そして南側の「下り」ホーム改札前には上井草駅の最大の目玉「ガンダム」の銅像が建立されています。数年前までガンダムの制作会社「サンライズ」の本社が上井草にあった関係で、地元商店街が建立しました。今でもガンダム像の前で写真を撮るアニメファンを見ることができます。

では駅の周辺をぶらぶらしてみましょう。この写真は「駅のホーム」を撮影したものです。10両編成が停車するとホームがギリギリで、車両が少し踏切にかかってしまって遮断機が開かないことがあります。杉並区内の駅は急行が停車しないのでラッシュ時に踏切が開かないことが多く、急いでいるときに車両がちょっとだけ踏切にかかって開かない場合も、あきらめるしかありません。まぁ仕方がないのですが……。
次の写真は上井草駅から西武新宿方面に向かって1分ほどいった線路わきの風景です。線路わきには、畑と屋敷林が点在しています。このあたりは江戸時代から葉物や根菜を生産する農村地帯で、戦前は「練馬大根」「ウド」、戦後1965年ごろまでは「キャベツ」などの生産地として有名でした。現在でもその名残が残っていて、本当にここは東京23区内なのか?という独特の空気が流れています。

この写真は上井草駅から所沢方面に2~3分ほど歩いた「千川用水」と線路が交錯する場所です。千川用水は玉川上水からの分水で1696年(元禄9年)に本郷・下谷・浅草方面の飲料水及び、沿川への農業用水供給のために作られました。西武新宿線周辺には千川用水から分岐した用水路があり、現在は暗渠化されて多くは遊歩道になっています。

しかし、数年前上井草駅周辺で鉄道の高架化が都市計画決定され、沿線にも少しずつ変化が表れてきました。駅前では、高架化を契機に杉並区がバス停などの整備目的で土地の取得を始めています。そして「秘境駅」の駅前についに「スーパーマーケット」が出現しました。そして、西荻でもおなじみの例の看板が設置…。さて、のんびりとした杉並の「秘境駅」は今後どんなふうに変わってゆくのだろう。
次回はお隣の「井荻駅」をぶらぶらしてみます。

(野田栄一)
6月22日は都議会議員選挙(再掲)

6月22日は東京都議会議員選挙です。告示日は6月13日。
杉並区選挙区の定数は「6」。すでにポスター掲示板が設置されています。やけに広い白がまぶしいですね。
選挙ドットコムの最新情報によると、前回15人とお知らせした立候補予定者が17人になっていました(12日の時点での調べ)。
また、区内には「選挙割」(各投票所でもらえる投票済証明書をお店で見せると何らかのサービスがうけられる)を実施する店舗もあるそう。
下記URLは「選挙割すぎなみプロジェクト」の公式サイトで、選挙割参加希望のお店の方はこちらから登録すれば、お店情報をサイトに掲載、またSNSなどにも流してくれるそうです。
https://senkyowarisuginami.wixsite.com/vote
選挙割実施店の最新情報はXが早い
https://x.com/senkyowari_sgnm
西荻のことカフェ/西荻シネマ準備室の
イベント情報2
中央線の謎とポートランド
ポートランドはなぜ変わったのか:
成長マシンからの脱却と都市の価値転換
講師:畢滔滔(ビイ・タオタオ/立正大学経営学部教授)
対談相手:三浦展(カルチャースタディーズ研究所代表)
2025年6月22日 日曜日 18時15分スタート
会場:西荻のことカフェ(杉並区西荻南3-6-2)
入場無料(1ドリンク制)・予約優先
最近話題のアメリカの街ポートランド、まちづくりの成功例として視察しに行く日本人も多い。でも調べて見ると、どうやら西荻と何だか似ているところがあるみたい。個人店が多い、自然食品・有機食品への関心が高い、自由に暮らす人が多い、音楽好きが多い、市民活動が盛ん、などなど。 ポートランドはこんな街という紹介本は多いけれど、どうしてこういう街ができてきたかはよくわからない。その歴史を解明してくれるのがタオタオ先生の『なんの変哲もない取り立てて魅力もない地方都市それがポートランドだった : 「みんなが住みたい町」をつくった市民の選択』です! ね、タイトルからして西荻を独立させて共和国にしたいと思っている人の心をくすぐりますよね。
中央線が好きな人、好きではないが、
どうしてこういう沿線文化が育ったか興味がある人
西荻が好きな人、好きではないが、
どうしてこういう文化が育ったか興味がある人
シンプルで地に足のついた生活をしたい人
自然食品・有機食品を選びたい人
ヒッピーやサブカルチャーに興味のある人
ソーシャルイノベーションをしたい人
ゲイ文化に興味のある人
ポートランドに興味がある人
その他、みなさまお越しください。
講師:畢滔滔
ビイ・タオタオ 立正大学経営学部教授
北京市生まれ。2000年、一橋大学大学院 商学研究科博士課程修了。博士(商学)。カリフォルニア大学バークレー校都市地域開発研究所客員研究員。 専門分野(商店街活性化、まちづくり、中心市街地再生、都市観光、合意形成、サンフランシスコ市) 。 著書 『なんの変哲もない取り立てて魅力もない地方都市それがポートランドだった : 「みんなが住みたい町」をつくった市民の選択』(白桃書房) 『シンプルで地に足のついた生活を選んだ ヒッピーと呼ばれた若者たちが起こしたソーシャルイノベーション: 米国に有機食品流通をつくりだす』(白桃書房) 『チャイナタウン、ゲイバー、レザーサブカルチャー、ビート、そして街は観光の聖地となった ― 「本物」が息づくサンフランシスコ近隣地区』(白桃書房)
問合:info@nishiogi.org(西荻のこと研究所)


いつでもできます
ニシオギ大調査
「西荻のこと研究所」で実施している「ニシオギ大調査」は、当初はイベント開催でしたが、現在では恒常的にできるようになっています。コースはAコースとBコースの2種類。
スタート地点から歩きながら、チェックポイントにてスマホで入力フォームにアクセス。それを繰り返すだけの簡単調査です。
コースガイドは「西荻のことカフェ」はじめ、西荻のいろんなお店のチラシラックなどにありますので探してみてください。こちらからPDFのダウンロードも可能です。


NEW!! 読みやすい杉並区議会議事録
内容をアップデートしました
杉並区議会・委員会の議事録より、「都市計画道路補助132号線」に関するやり取りの部分だけを抜粋した、読みやすい縦書きPDFを以前から公開しておりましたが、このたびバージョンアップしました。
収録の期間がぐぐっと増えて、
平成30年9月〜令和4年5月
となります。
令和4年5月を区切りとしているのは、令和4年6月19日に杉並区長選挙があり、ここで区長が交代しているためです。区長交代後の議事録も現在作業中。
どんなやりとりが行われてきたのか、ぜひチェックを。
以下よりダウンロードしてください。
https://nishiogi.org/wp-content/uploads/2024/09/240922gijiroku132_01.pdf

大好評発売中!!!
「ニシオギ空想新聞Vol.2」
(全16ページ/フルカラー)
発行日 2023年3月15日
販売価格 330円(税込)
西荻の道路や開発のことを扱った「ニシオギ空想新聞2」。ぜひ多くの方に読んでいただいて、西荻の人自身で西荻のことを考える機運となればと願っています。
販売店(5/31現在・順不同)
西荻のことカフェ/信愛書店/古書音羽館/村田商會/カフェインザラフ/暮らしのいろいろ ていねいに、/三つ枝商店/インド料理ガネーシャガル/今野書店/Loupe/Dawner/やきとり戎/アトリエハコ/サロン+アトリエポルカ/Title/BREWBOOKS/ランチハウス/数寄和
目次:
◯抄録 ことビルオープニングトーク 「西荻のこと、まちのこと、これからのこと」 饗庭伸・中島直人
◯報告 ニシオギ大調査 コース紹介・参加方法・分析座談会
◯分析 さとことブレスト
◯インタビュー 都市計画道路担当課長・星野剛志さん
◯4つの疑問と6つの提案
◯インタビュー 西荻の人に聞きました2
やきとり戎/JR西荻窪駅/関東バス株式会社 信愛書店/あなたの公差転/杉並区長/中野書店 区議会議員(1)/区議会議員(2)
◯ニシオギ空想新聞図書室
お問い合わせメール
info@nishiogi.org
なお、3年前の2020年1月に西荻案内所から発売されたVol.1はこちらから無料でダウンロードできます。そちらも合わせてぜひチェックを。
西荻シネマ準備室の貸出について
西荻シネマ準備室は、西荻窪からなくなって久しい「映画館」の復活を目標に、その実現に向けての調査研究・準備をするために設けられたスペースです!……が、ふだんは多目的スペースとして以下のようなご利用が可能です。
展示会○販売会○新製品発表会○ワークショップ会場○トークイベント会場○ミーティング・会議○撮影スタジオ○習い事○読書会○学習会○お教室○記者会見○オンライン配信会場 などなど
1時間 平日2,200円 土日祝2,750円(利用は2時間から)
1日 平日22,000円 土日祝27,500円(9-21時)
いずれも税込
ご利用のお問い合わせ kabu@nishiogi.org
西荻のこと研究所
メルマガアンケート
メルマガ読者の皆様からの叱咤激励をいただきたく、アンケートを作ってみました。何度でも構いませんので、新しいご意見を思いつきましたら、ぜひ投稿してください
アンケートはこちらから

西荻窪の未来を考える会議 議事録
2020年7月17日と11月20日、西荻北銀座商友会の樋代会長と、杉並区の道路と都市計画と商店街関係部署(都市整備部土木計画課・市街地整備課・産業振興センター)の担当者と、西荻のこと研究所メンバーで会合を持ちました。その際の議事録をHPにアップしました。
この「西荻窪の未来を考える会議」は、将来的には西荻窪エリアに住む住民にもっと開かれたまちづくり会合の場を実現するべく、その準備として行っています。
西荻窪の未来を考える会議第1回
西荻窪の未来を考える会議第2回
研究所員をいっしょにやりませんか?
参加希望の方、まずはメールをお送りください。
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西荻のこと研究所 メールマガジン配信
次号 2025年6月26日(木) 予定
西荻のこと研究所では、みなさんが気になっていることなどを取り上げてまいります。感想やご意見、取り上げてほしいことや疑問質問などお寄せください。また、「西荻のこと」についての投稿などもお待ちしています!
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