2024年7月5日

西荻のこと研究所 メールマガジン75号(2024.3.6)

投稿者: nishiogiorg

神明通りあさ市と、
善福寺川調節池計画と、
留学生による西荻発表会、
のこと

西荻のこと研究所のメールマガジンの配信がしばし滞ってしまったことをおわびします。前回74号が昨年の11月9日でしたので、実に3ヵ月以上も止まってしまいました。

その間、西荻界隈でもいろいろなことがありましたが、情報収集や意見交換をしているうちに時期を逸してしまったり、次の話題にうつってしまったりなどで、メルマガとして配信するまでの精度に高められないまま、気づけば3ヵ月超……。
西荻のこと研究所の主要メンバーが運営している「西荻のことカフェ」のほうも、おかげさまで大繁盛……とまではなっていないものの、カフェというのはなにかとやることが多いもの。小さなところからこつこつとやっているうちに、メンバー揃ってじわじわと多忙になり、ついには「メルマガ?いつだすんだっけ?」、というような状況になりかけていました。

さて、気を取り直して、ひとまずこの3ヵ月の西荻を振り返ってみましょうか。

復活! 神明通りあさ市

西荻のことカフェの前にある神明通り。
この道で毎月第3日曜日に開催されていたのが「あさ市」(主催=西荻東銀座会)
1975年からほぼ休みなく続く人気のイベントで、朝の時間帯だけとはいえ自動車を通行止めにして賑わいを見せていましたが、2020年2月の開催のあと、新型コロナの感染拡大に伴いしばらく休止していました。
そのあさ市が、コロナが「5類感染症」に移行したことを受け、2023年10月にひさびさ復活、2024年1月21日からは以前と同じく月1回のペースでの開催となり、3月からは以前と同様、商店会員以外の出店も受け入れていくそうです。

1月のあさ市は「新春あさ市」ということで、あいにくの雨でしたが復活を待ちに待っていたたくさんの「西荻っ子」がいらっしゃいました。「西荻みなみ」では、大宮前郷土芸能保存会による大黒舞と獅子舞の披露もありました。また、1月1日に発生した「能登半島地震」を受け、「朝市」で有名な輪島市へ義援金を贈ろうということで募金箱を設置。聞けば、西荻の「あさ市」も輪島の朝市をヒントにスタートしたとのことです。次回のあさ市開催は3月17日(日)です。

善福寺川調節池計画

杉並区内にあらたな都市計画が決定されました。「善福寺川上流調節池(仮称)」です。洪水の発生を防止するため、善福寺川の水30万立方メートルを一時貯留できるという地下トンネルで、時間あたり75ミリの雨に対応しています。令和5(2023)年3月に神田川流域の整備計画が改定され、8月に素案の説明会(この開催にはまったく気づきませんでした…)、12月に都市計画案の公告・縦覧を経て、令和6(2024)年1月17日に杉並区の都市計画審議会で答申が出され(異例のことだそう)、また1月20日には杉並区役所にて、東京都による説明会が開催されました。そして2月6日に開催された東京都の都市計画審議会で「都市計画」として決定しました。経緯は以上ですが、一般に情報が出回るようになったのは昨年秋頃でしたので、決定に至るまでかなりスピーディーだったという印象です。

善福寺川とその周辺の都道の地下に、シールド工法で直径約9メートルのトンネルを掘り、そこを貯留池とする計画です。関根文化公園から川を逆流するように原寺分橋まで、そこから女子大通り・青梅街道・環状八号線・五日市街道の直下を通り、善福寺川緑地の「ロケット公園」に至るのがトンネルのルートです。その間3箇所(関根文化公園・原寺分橋付近の住宅地・ロケット公園)に立坑がつくられ、資材の搬入、土砂の排出などに使われるとのこと。完成後、立坑の場所には管理施設や取水口が設置されることとなります。

この計画のメリット・デメリットについて見ていきます。

まずメリットとしては当然のこととして、善福寺川の水位を低下させ、浸水被害を防ぐということがあげられます。
善福寺川の流域では毎年と言ってもいいほどに浸水被害が起こっていますが、完成のあかつきにはその頻度が減ることは間違いないです。善福寺川沿いにある似たようなトンネル「善福寺川流域合流改善貯留施設」(こちらは川の水ではなく善福寺川に流入する雨水を含んだ下水を一時貯留する施設)は1万5千立米なので、今回のトンネルは規模で20倍となります。具体的な量を個人的に試算してみました。豪雨時に原寺分橋付近で膨大な水が轟々と渦を巻きながら合流しているのを見たことがある方もいると思いますが、武蔵野市に降った雨の60%がここで善福寺川に放流されているのです。この合流がなければ、善福寺川の浸水被害はかなり軽減されると思うのですが、急激な都市化のなかでこのような解決方法が選択されてきました。30万立米はこの武蔵野市からの大量の水を、数時間は受け入れることができる容積となります(管の大きさから流入量を1時間最大10万立米程度と考えました)。

次にデメリット。1月20日の説明会を聞きに行ったのですが、その際にいろいろな方が質問や発言をされていて、デメリットにもさまざまなものがあるのだと驚きました。
まずは、①シールド工法の安全性について。
シールド工法というのは、モグラみたいなシールドマシンで地下を削り進めながら、その掘った直後からセグメントというコンクリート壁を設置していくという工法で、ここ最近の一般的なトンネル工事では多く採用されています。この工法を採用している外環道の工事で、地上に穴が空いたというのは記憶に新しいところで、近年、シールド工法への不信感が高まっています。また、地下工事で伏流水が抜けちゃって井戸を涸らすんじゃないかとか、そういう不安の声が出ていました。
②公園が使えなくなる、公園がなくなるという問題。
立坑を設置するロケット公園と関根文化公園は、子どもたちの貴重な遊び場所ですが、今回の工事に伴い、実質閉鎖となります。園庭のない保育園などでは、園庭代わりにもなっているので、区としては代替地を検討しているようですが、そうなると代替地の整備にあたって樹木を伐採するなどということも新たにでてくるでしょう。小さなお子さんがいる近隣家庭にとっては気になるところで、説明会では特にこの公園のことを問題視している参加者が多かった印象です。
③施工の予算が1000億円。
そのお金をグリーンインフラの整備にふりわけたほうが効果が出るのでは、という意見がでました。東京都では1時間75ミリの雨に対応するということで浸水防止の目標値が定められており、そのうち50ミリは「川に流す」ことを前提とし、残り25ミリのうち10ミリは浸透ます・雨水タンク・透水性舗装などのグリーンインフラで地面に浸透させることを推進しています。そして残りの15ミリに対応するのが今回の貯留池計画となります。
1000億円の巨大予算を、これまであまりに少なかったグリーンインフラ推進の予算に振りかえることで、例えばグリーンインフラ20%を目指せば残り5%となり、シールドトンネルの太さが小さくなって予算も減り工期短縮、工事の安全性も高まるというわけです。
具体的には浸透ますや雨水タンクの設置に補助金を出すとか、透水性舗装を積極的に採用するとかですね。ただし、浸透ますや雨水タンクは、民間の取り組み次第というところが多く、現状での達成率は60%程度なのだそう。また、透水性舗装は通常の舗装より劣化が早く、交通量の多い道では採用できないということもあるそうです。
④工事車両の増加
工事が始まれば砂利を運び出すダンプトラックと、セグメントという構造物を搬入するためのトレーラーが行き来することになります。説明会では具体的な数字は示されなかったものの、30万立米の土砂ですから、10トンダンプ1台に6立米積載できるとして、少なくとも5万台分。セグメントのトレーラーも5千台くらいは必要になりそうです。1日30〜40台が10年続くわけで、説明会を聞いている限りでこれが地域にかかる負荷としては一番大きいのかなと感じました。
メリット・デメリット以前に、そもそも住民への周知が足りないという問題。
昨年8月に説明会を開催したのですが、それを知らなかった近隣住民や公園利用者が多数。開催告知の紙が届かなかったなどと訴える方もいました。また、原寺分橋付近の立坑は、他の立坑予定地と違って公園ではなく住宅を立ち退かせて設置される予定であり、家が新たに都市計画に組み込まれることの周知をどのくらいしているのか、などの質問が相次ぎました。
住民意見を反映させた形で「計画素案」が「計画」になっていくというプロセスがあったそうですが、どんな住民意見があったのかという質問に対して都側が「都市整備局がやったことは私たち建設局にはわからない」と回答したので説明会が一時紛糾。都市整備局・建設局・下水道局の三者が連携して対応するところを、縦割りというか、行政の悪弊がこんなところで出てきました。まるでカフカの『城』ですね。西荻の道路拡幅でも同様に、土木計画課・市街地整備課・産業振興センターなど関連部署の連携が取れていないということを何度か経験して来たことを思い出しました。

このような説明会のあと、2月6日に開催された東京都都市計画審議会で「都市計画」として決められたので、今後は事業認可→着工となっていくわけですが、都市計画の制定から認可まで50年以上かかった西荻の都市計画道路とは違い、かなりすばやく進んでいくのでは、ということが予想されています。
また、その直前の1月26日に、杉並区側が東京都知事の小池さんに対して、区の考え方と要望を示した回答書を出していて、その内容は区のHPに公開されています。この内容が上記のデメリットをだいたい踏まえた内容になっていて、行政が出した文書としてはなかなか画期的ですので、一読されることをオススメします。

参考HP: https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/machi/chisui/zempukujigawashinsuitaisaku/index.html

明治大学大学院の建築学科留学生による発表会

ほか、この3ヵ月でこと研がやったこととして、明治大学大学院の建築学科留学生による、西荻を題材にしたゼミへの協力をご紹介します(担当教授は吉良森子さん)。

世界各地から日本に留学して建築を学んでいる留学生のみなさんに、西荻をぐるりとフィールドワークしてもらい、そのあと、西荻にこんなのがあったらいいのでは、というモデルを4グループに分かれてそれぞれ作成し、発表してもらいました。

実はこと研が具体的な場所を提示しています。道路拡幅に伴って一時的に宙ぶらりん状態になっている「取得済み道路用地」、最近増えてきていますよね。レンタル自転車の駐輪スペースになっていたり、ただの空地になっていたり、ガードレールで囲われていたり。そういった場所をもっとうまく活用して、街のにぎわいにつながるアイデアを出してほしいというのが、こと研から出した課題でした。

12月末に西荻で発表会があったのですが、学生さんたち、フィールドワークからだけでなく独自に、西荻の歴史や空気感なども分析してきていて、それをベースになにがあったらいいのか、というのを考えてきていました。
また、プロの手が入らなくても組み立て可能な仕組みの造作物をデザインするなど、建築にとどまらない持続可能な空間づくりを意識していたのが印象的でした。 発表内容は条件が整ったらぜひ皆さんに公開シェアしたいのですが、ひとまず、それぞれのタイトルだけ紹介します。「JAMAIS VU」「POCKET ANATOMY PROJECT」「tea dots」「A Place to (…)」。当該の商店街である「西荻北銀座商友会」の皆さんには見ていただきました。よい刺激になったようです。学生さんのアイデアがどれか一つでも実現するといいですね。

今後の「西荻のこと研究所」の活動としては、杉並区が昨年3月のシンポジウムでぶちあげた「ニシオギデザイン会議」というのをそろそろ始めるらしいので(ときどき訊かれるのですが詳細はなにも知りません)、それに向けて何ができるか、そもそも何かができるのだろうか、などということを考えています。ひきつづき「西荻のこと研究所」の活動をお見守りください。


気になる展示情報
世田谷のまちと暮らしのチカラ
まちづくりの歩み50年

※終了しています

世田谷区・三軒茶屋、キャロットタワーの中にある「世田谷文化生活情報センター 生活工房」にて、気になる展示をやっています。世田谷区では、1980年代から住民参加型のまちづくりを積極的に取り入れてきました。公共施設の整備に当たって、アイデアを募集するなどを手始めとして、ワークショップの取り組みなど、区民のまちづくり活動を支援するしくみづくりが整えられました。
今回の展示は、世田谷まちづくりの50年を、地形や都市計画、グラフィックデザインなどの各資料を通して振り返るという企画で、関連シンポジウムやトークイベントなども合わせて開催されます。3月17日(日)の「未来の世田谷シンポジウム」では、東急・京王・小田急の私鉄各社も登場して、未来の世田谷についてお話するそう。近日中にこと研メンバーで観に行って展示のレポートをしたいと思います。

開催 4月21日(日)まで (月曜休み) 入場無料
会場 生活工房ギャラリー(世田谷区太子堂4−1−1キャロットタワー3F)


いつでもできます
ニシオギ大調査

  「西荻のこと研究所」で実施している「ニシオギ大調査」は、当初はイベント開催でしたが、現在では恒常的にできるようになっています。コースはAコースとBコースの2種類。
スタート地点から歩きながら、チェックポイントにてスマホで入力フォームにアクセス。それを繰り返すだけの簡単調査です。
コースガイドは「西荻のことカフェ」はじめ、西荻のいろんなお店のチラシラックなどにありますので探してみてください。こちらからPDFのダウンロードも可能です。


大好評発売中!!!
「ニシオギ空想新聞Vol.2」

(全16ページ/フルカラー)
発行日 2023年3月15日
販売価格 330円(税込)

西荻の道路や開発のことを扱った「ニシオギ空想新聞2」。ぜひ多くの方に読んでいただいて、西荻の人自身で西荻のことを考える機運となればと願っています。

販売店(5/31現在・順不同)
西荻のことカフェ/信愛書店/古書音羽館/村田商會/カフェインザラフ/暮らしのいろいろ ていねいに、/三つ枝商店/インド料理ガネーシャガル/カフェカワセミピプレット/今野書店/Loupe/Dawner/やきとり戎/アトリエハコ/サロン+アトリエポルカ/Title/BREWBOOKS/ランチハウス/数寄和


目次:
◯抄録 ことビルオープニングトーク 「西荻のこと、まちのこと、これからのこと」     饗庭伸・中島直人
◯報告 ニシオギ大調査     コース紹介・参加方法・分析座談会
◯分析 さとことブレスト
◯インタビュー 都市計画道路担当課長・星野剛志さん
◯4つの疑問と6つの提案
◯インタビュー 西荻の人に聞きました2
やきとり戎/JR西荻窪駅/関東バス株式会社     信愛書店/あなたの公差転/杉並区長/中野書店     区議会議員(1)/区議会議員(2)
◯ニシオギ空想新聞図書室


お問い合わせメール
info@nishiogi.org

なお、3年前の2020年1月に西荻案内所から発売されたVol.1はこちらから無料でダウンロードできます。そちらも合わせてぜひチェックを。


西荻シネマ準備室の貸出について

西荻シネマ準備室は、西荻窪からなくなって久しい「映画館」の復活を目標に、その実現に向けての調査研究・準備をするために設けられたスペースです!……が、ふだんは多目的スペースとして以下のようなご利用が可能です。

展示会○販売会○新製品発表会○ワークショップ会場○トークイベント会場○ミーティング・会議○撮影スタジオ○習い事○読書会○学習会○お教室○記者会見○オンライン配信会場 などなど

1時間2,200円 または1日22,000円(9-21時)


ご利用のお問い合わせ kabu@nishiogi.org

西荻のこと研究所
メルマガアンケート

メルマガ読者の皆様からの叱咤激励をいただきたく、アンケートを作ってみました。何度でも構いませんので、新しいご意見を思いつきましたら、ぜひ投稿してください
アンケートはこちらから

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 83132102-f2fe-45e9-85d8-c78cce759210.png

読みやすい杉並区議会議事録

平成30年9月から令和2年6月までの杉並区議会より、都市計画道路補助132号線に関するやり取りの部分だけを抜粋したPDFを作成しました。
どんなやりとりが行われているのか、ぜひチェックを。
読みやすいように縦書きでレイアウトしてみました。

以下よりダウンロードしてください。
https://nishiogi.org/wp-content/uploads/2020/08/gijiroku132.pdf


西荻窪の未来を考える会議 議事録

2020年7月17日と11月20日、西荻北銀座商友会の樋代会長と、杉並区の道路と都市計画と商店街関係部署(都市整備部土木計画課・市街地整備課・産業振興センター)の担当者と、西荻のこと研究所メンバーで会合を持ちました。その際の議事録をHPにアップしました。
この「西荻窪の未来を考える会議」は、将来的には西荻窪エリアに住む住民にもっと開かれたまちづくり会合の場を実現するべく、その準備として行っています。

西荻窪の未来を考える会議第1回

西荻窪の未来を考える会議第2回


研究所員をいっしょにやりませんか?
参加希望の方、まずはメールをお送りください。
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次号 2024年3月27日(水)予定


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