2020年10月2日

西荻のこと研究所 メールマガジン 09号 (2020.09.17)

投稿者: nishiogiorg

行政アンケートから考える西荻の未来
―人の思いが街をつくる―

西荻のこと研究所では、沿道の関係者(認可区間の地権者・店舗をまたは住居を借りている人のうち、建屋が道路用地にかかっている方)を対象にしてのアンケートをおこなってきました(内容は03号メルマガに掲載)。

 杉並区としては、道路計画そのものについての是非に関するアンケートや住民ミーティング等は実施していませんが、「西荻窪駅周辺まちづくり方針」の策定を目標に、西荻窪がどのような特色を持った地域なのか、またこれからどのような場所になってほしいかなどを地域住民に聞く「まちづくりアンケート」「まちづくりワークショップ」「まちづくり懇談会」をおこなっています。それらの実施報告書はいずれも杉並区のウェブサイトで読むことができます。本稿では、各報告書や「杉並区まちづくり方針」などから、西荻地域がどのように捉えられているかを紹介しながら、西荻住民の意見や望んでいる未来を考察します。

 西荻のこと研究所が行なったアンケートでも、様々な立場の方から貴重なご意見をたくさんいただきました。行政の行ったアンケートにおいても、貴重な意見であることは同じ。住民の方々の意見をアンケートから読み解きました。
 そこで暮らす「人」がいるからこそ「街」が形成される。データとして示されていたとしても、そこには「人の思い」があります。

西荻の街は変化の時を迎えようとしています。意見や考え、それぞれの「思い」があることこそが街の個性であり、未来の西荻を形成していくはずです。まずは、その言葉に耳を傾け、寄り添いたいと考えています。

 「人」の作る街、みなさんの考えや意見が未来の街をつくります。話すこと、共有することで違う見方や発見があるかもしれません。

 本稿にて紹介するものは下の通りです。西荻のこと研究所のウェブサイトに各報告書へのリンクがあるので、そちらもご参照ください。

杉並区まちづくり基本方針 杉並区都市計画マスタープラン 平成25年10月 杉並区都市整備部都市計画課
内容:「支えあい共につくる安全で活力あるみどりの住宅都市 杉並」を将来都市像に、杉並各地域の課題と目標を示す。

平成28年度 西荻地域まちづくりアンケート調査 調査報告書(平成29年3月)杉並区都市整備部まちづくり推進課
内容:善福寺・今川・桃井・宮前などを含む「西荻地域」の住民3,000名を抽出しアンケート調査を実施。回収率36.3%

西荻まちづくりワークショップ(平成29年12月・平成30年1月)実施報告書 杉並区都市整備部まちづくり推進課
内容:上記「西荻地域」在住者から無作為抽出した区民に参加申込書を送付、提出した区民で「西荻まちづくりワークショップ」を開催。

西荻窪駅周辺まちづくりアンケート調査 調査結果報告書(平成30年11月)杉並区都市整備部市街地整備課
内容:西荻窪駅周辺地域(西荻北2・3、西荻南2・3、松庵3)にポスティングし郵送回収。回収率は10%弱

ほか参考資料
西荻窪駅周辺まちづくりだよりNo.1 令和元年6月 杉並区都市整備部市街地整備課
内容:「西荻窪駅周辺まちづくり懇談会」の実施報告。懇談会は上記「西荻窪駅周辺地域」に、居住・営業・土地建物所有が参加条件。

西荻窪駅周辺まちづくりだよりNo.2 令和2年3月 杉並区都市整備部市街地整備課
内容:「西荻窪駅周辺まちづくり懇談会」のテーマ別部会。3つのテーマ「付加価値を生むまちづくり」「暮らしやすいまちづくり」「安心・安全なまちづくり」。

西荻らしさについて考える
個性豊かな個人店が作る西荻の街、
住民の考える個性と将来

 西荻は個人店の立ち並ぶ、個性的なまちです。杉並区の行った西荻地域まちづくりアンケート調査においても、約半数の方が、西荻地域の特徴・良さとして、「低層中心の落ち着いた住宅地」、「アンティークショップや古書店、喫茶店等の個性的な店舗の集積」を選んでおり、個性的な小規模の店舗がたくさんあることで、西荻の個性と言える雰囲気と、他の街との違いである魅力を形成しています。
 また、西荻窪駅周辺のにぎわいについて、「将来どのようになってほしいと思いますか」との問いには、「気取らず親しみやすい庶民的なまち」が最も多く6割以上、「歩いて楽しく回遊できるまち」、「個性的な店舗が集まるまち」も約5割という結果です。

「西荻地域まちづくりアンケート調査」より
「西荻地域まちづくりアンケート調査」より

 さらに、西荻まちづくりワークショップでは、「西荻の他のまちとここが違う!」という意見で、4割を超える方が「店の魅力」と答えています。
 また、杉並区まちづくり基本方針の中に、西荻地域のまちの個性について言及されている箇所もあります。行政としてもまちの個性は大切な資源として捉えており、個性を大切にすることで豊かなまちを目指すことが大切だと考察します。

「西荻まちづくりワークショップ」より

 西荻窪駅周辺まちづくりアンケート調査の自由記述「まちの好きなところ、嫌いなところ」では、雰囲気や利便性、安全性、静かさや生活のしやすさや個性的な店舗やおしゃれなお店、地元の飲み屋が好きなところとして多かったことを挙げ、主な意見を紹介しています。

参考:まちの好きなところに関する主なご意見
◯大きな商業施設がなく、駅南口の飲食店街や昭和レトロ、文化的など独自の雰囲気がある。
◯交通の利便性がよい。
◯落ち着いた環境、住宅街が静か、こじんまり・のんびりとしているまち。
◯個人の美味しい飲食店が多い。
◯まちがコンパクトで買い物が便利。
◯古くから残る個人店や個性的な個人店が多く、親しみやすい。買い物が楽しい。

「西荻窪駅周辺まちづくりアンケート調査」より

個性的なまちを創る

杉並区のまちは、そのまちが形づくられてきた歴史的経緯やまちの伝統、立地条件などによって、地域によって特性が異なっています。 そしてそれらが織りあって、地域の個性を醸し出しています。その地域特性に応じた彩り豊かなまちをめざしていくとともに、杉並区の個性を創りあげていきます。 

「杉並区まちづくり基本方針」P6

杉並区まちづくり基本方針の中でいくつか挙げられている主要課題の中には「杉並らしさが感じられる個性あるまちなみ景観を醸成すること」 という、街の個性に言及するポイントもあります。(「杉並区まちづくり基本方針」P11)
住民が求める「西荻らしさ」と、行政の「個性的なまちを作る」という取り組みは矛盾しません。変化を経てもなお、選ばれるまちであるためには、西荻の街を今選んでいる人々が思う「西荻のまちの個性」を大切にすることが重要なのではないでしょうか。

ウォーカブルシティ、 ポケットパークの提案
住民の願う、歩いて楽しく回遊できるまち

 国土交通省による「ウォーカブルシティ」という取り組みについて、既に西荻のこと研究所では何度かお伝えしています。コンセプトは「居心地のよい・歩きたくなるまち」。アメリカの都市開発では主流になってきている、車よりも人を中心に考え、歩きやすい街づくりをしようという取り組みで、日本でもすでに201の推進都市があり、杉並区も推進都市のひとつです。
 
 西荻地域まちづくりアンケート調査では、住民の意見として、「歩いて楽しく回遊できるまち」を西荻窪駅周辺の将来のにぎわいとして求める意見が半数を超える値で出ています。これはウォーカブルシティのコンセプトと合致しています。
  西荻のこと研究所から、街づくり・土地活用において「ポケットパーク」という提案があります。「ポケットパーク」とは、ミニ公園のこと。公園という言葉で想像するほど大きくはない、でも、人々の憩いの場として存在する空間です。
 散歩や買い物の合間にちょっとひと休み、コーヒー片手におしゃべりができるスペースがあったらワクワクしますよね。街の景観を崩さず街の賑わいもプラスされる。緑化されたポケットパークが存在したら、杉並区の掲げる「みどり豊かな環境にやさしい まち」と、住民の意見である「歩いて楽しく回遊できるまち」が、西荻らしい「個性的な店舗が集まるまち」の賑わいを活性化し、西荻の個性である「気取らず親しみやすい庶民的なまち」を失わずに変化していけるのではないかと考えます。

安全な環境づくり
安全と個性の共存が選ばれる街をつくる

 生活していく上で、安全で、災害時に備えのある地域であることは「暮らしやすい街」の大きな要素であり、ベースとなるものです。環境の変化や地域住民の実際の声を聞きながら安全を考え、災害時に備えることは当然、大切です。
 しかし、西荻窪駅周辺まちづくりアンケート調査のなかで、「将来的にどんなまちになったら良いかとお考えですか」との問いに、「駅前周辺の賑わいと閑静な住宅地が調和したまち」という、西荻の雰囲気や個性を将来に残していきたいという意見が最も多かったのです。安全への配慮から「西荻らしさ」が失われていってしまうのは悲しいこと。
  杉並区まちづくり基本方針では、杉並区の将来都市像として「支えあい共につくる安全で活力あるみどりの住宅都市 杉並」を掲げています。更に、その中で掲げられている3つの目標、
「災害に強く安全・安心に暮らせるまち」
「暮らしやすく快適で魅力あるまち」
「みどり豊かな環境にやさしいまち」

 この3つの目標を目指し、分野ごと、地域ごとに街づくりをしていこうというもの。「暮らしやすく快適で魅力あるまち」「みどり豊かな環境にやさしいまち」も忘れてはいけません。
 個性と安全の共存こそが地域が目指していくべき姿であると「西荻のこと研究所」では考えます。

「西荻窪周辺まちづくりアンケート調査」より

街の未来をつくる意識を持つ
選ばれる魅力的なまちである必要

 数十年前の計画ではあるものの、杉並区の掲げる目標に則して行われる道路拡幅。「西荻のまち」が変わろうしています。
 その変化の時に街のことを後回しにした建て替えが増え、街の個性が失われ、選ばれない街になってしまった時、どういう事態が起こるでしょうか? 街に魅力を感じなくなることで、個性的なお店が移転してしまう、空き店舗が増える、街の価値が下がってしまう。そんなこと、想像はしたくないですが、長いスパンで考えるからこそ、変化を経ても「選ばれる街」である必要があります。

 西荻まちづくりワークショップ「西荻のもっとこうなると◎!なところ」では、道路・交通・移動 手段の充実 という意見に次ぐ割合で、店舗利用の充実 という意見がありました。個別意見は以下の通り。

◯空き店舗を活用してほしい
◯良い店がなくならないようにサポートしてほしい(親の代替わりサポート等)
◯個人商店に頑張ってほしい。個人商店が運用しやすくなると良い(補助金支援等)
◯商店街がさらに充実してほしい

 空き店舗の充実に関する意見も見られます。
 街の個性を大切にしながら「街の未来を考えていく」ことは、街に暮らし、生きる我々が主体的に考えていくべき事案だと考えます。
 
 皆さんの選択が西荻の未来を築きます。とはいえ、ひとりで考えて行動していくことは難しく、不安なこと。西荻のこと研究所では、それぞれの意思があり、意見があることも西荻の大切な個性であり魅力のひとつと考えます。どうしたらいいか分からない、方向性は決めたが具体的に進めていくにあたって不安がある、相談できるところがない、、など。皆さんの不安や疑問に寄り添い、相談できる専門家を紹介する、これまでの事例をお話しするなど、お手伝いをしたいと思っています。ご相談内容によって、弁護士、不動産屋、建築士、行政担当者など、ご紹介することもできますので、お気軽にご相談ください。


気になるまちに行ってみよう 第1回
麻布十番編

 近年、様々な地域で街が変化しています。西荻窪も変わりつつある今、他のまちを見て理想の街を考えるのも楽しいと思いませんか?
 ということで、今回は麻布十番に行ってきました。麻布十番、どんなイメージがありますか?私は新しいお洒落なまちだと思っています。麻布十番は坂道の多いすり鉢状の地域で2000年に地下鉄の駅の開通、その後の六本木ヒルズの開業により来場者が増えているまちです。「区民発意のまちづくり」としても注目され、まちづくり協議会が主体となってまちづくりをしています。
 それでは麻布十番の街についてここでは特に私が注目したことを紹介します!

距離感が近くウィンドウショッピングにおすすめ!

 麻布十番商店街の道路は一車線の一方通行で歩道も少し狭く整備されています。そのため道路の反対側のお店もどことなく距離が近いように感じます。また実際に歩いてみると、商店街を歩いて楽しむ人たちに優しいまちになっているように感じました。道路が石畳になっていることや舗装がきれいであることも歩きたくなる一因になっているように思いました。
 麻布十番の街は、目的を決めずに興味のあるお店に立ち寄るそんな風についつい歩いてみたくなります。ただふらふらと多くのお店に引き寄せられた結果、気がついたら想定以上に買い物してしまっていることも。このような歩きやすい街は毎日の買い物が楽しくなるかもしれません。

新しい店も歴史ある店も、一つの町で二つの良さが味わえる。

 さらに麻布十番商店街は外国風のおしゃれなお店が立ち並ぶイメージが強いですが、歩いていると昔ながらのお店もたくさん見つけることができます。カフェやショコラトリなどを見て回るのも楽しいですが、老舗の店舗を見つけるとなんだかほっとした気分になりませんか。昔からのなじみ深い店が残り続けているのを見ると嬉しくなります。
新しい店舗も老舗の店舗もどちらも一つの商店街の中で共存しているということが、伝統を大事にしつつも新しいことに挑戦していく姿とも感じられ、今後もこのまちの変化に注目したいと思いました。

 今回のメールマガジンには他の記事との兼ね合いもあり、ほんの一部の内容しか掲載することができませんでした。西荻のこと研究所のホームページ(https://nishiogi.org/azabu10ban01/)にて、より詳しくご紹介しています!ぜひホームページを覗いてみてくださいね。
 まちは場所によってさまざまな様相を見せています。まちを歩きながら良いところを見つけて、それを組み合わせた「理想のまち」を考えて友達や家族と話すのも楽しいのではないでしょうか。 (文・西澤)


夢のスーパー・ライフを
提案しました

※このスケッチはあくまで夢や希望を描いたもので、実際とは異なります。
(作:西荻のこと研究所 鈴木)

西荻窪駅から青梅街道をつなぐ西荻のメインストリートともいえる132号線に新しく建つ大型スーパーライフさんに、こんなスーパーだったらいいな!という妄想を膨らませた「夢のスーパー・ライフ」を提案させていただきました。

メインテーマは、「個性ある個人店と生活を支える大型店の共生」「ゆっくりとお買い物を楽しめる地域環境にも配慮したスーパー」です。
こと研の夢や希望を詰め込んだイメージスケッチを見ながら、以下の提案項目を読んで見てくださいね!

1)エントランス
・車椅子やベビーカー利用者に便利な ゆったりとした屋根のあるピロティ状の出入口
・キッチンカーや地域栽培の野菜や個人商店の出張販売など、地域交流イベントのメインスペースとして相互利用できるスペースの確保
2)駐輪スペース
・特に132号線からの景観を損ねない配置計画
・道路拡張工事後にも余裕のある駐輪台数の確保(歩道駐輪禁止)
・駐輪しやすい自転車ラックの設置
・近隣商店での買いもの時に相互利用を可能に
3)敷地内緑地(サポートイメージ:地域の環境団体、西荻のこと研究所)
・地域の特性にあう樹種選定(北銀座通りのプラタナスなど)
・ポケットパーク:地域住民による計画と管理  (※杉並区の補助制度あり)
・道路拡張工事後にも豊かな緑地の確保
4)外観
・街並みに調和した派手ではなく落ち着いた色彩計画
・駐車場の雰囲気を和らげ壁面緑化や屋上緑化
5)照明
・街の魅力を高める夜間空間の演出
・眩しさのない落ち着きのある照明
6)歩道状空地(サポートイメージ:杉並区役所、西荻のこと研究所)
・お買い物の休憩や飲食のできるスペース(withコロナ対策)
・132号線の歩道とつなげて広場として使えるスペース
・地域イベントに利用できるスペース
・道路拡張工事後にも安全にお買い物のできる歩道状空地の確保
7)環境への配慮(サポートイメージ:地域の環境団体、西荻のこと研究所)
・善福寺川の反乱を考慮しての浸水治水対策
 (レインガーデン、ビオトープ、浸透性素材の外部利用)
・132号線のグリーンインフラの中心となる緑地の創生

以上、いろいろとご提案いたしましたが、西荻のまちの誇りとなるような、素敵なスーパーとなることを期待しています!

ワークショップ開催のおしらせ(※すでに終了)

善福蛙×こと研
北銀座通りを歩いてみる

〜グリーン&ウォーカブルストリート ワークショップ〜

9月26日(土)14時〜
07号のメールマガジン(記事はこちらで紹介した善福蛙こと「善福寺川を里川にカエル会」と「西荻のこと研究所」のコラボ企画が実現。
道路拡幅で揺れる西荻窪の北銀座通りをあらためてじっくりと歩いてみて、さまざまな発見を共有しながら考えてみようというワークショップです。

参加無料(ただし後半でカフェに入るのでドリンク代実費がかかります)
参加申込:西荻のこと研究所 info@nishiogi.org
※お申込みをいただいた方に集合場所などお知らせします。

読みやすい杉並区議会議事録

平成30年9月から令和2年6月までの杉並区議会より、都市計画道路補助132号線に関するやり取りの部分だけを抜粋したPDFを作成しました。
どんなやりとりが行われているのか、ぜひチェックを。
読みやすいように縦書きでレイアウトしてみました。

以下よりダウンロードしてください。
https://nishiogi.org/wp-content/uploads/2020/08/gijiroku132.pdf


研究所員をいっしょにやりませんか?
参加希望の方、まずはメールをお送りください。
info@nishiogi.org

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次号 10月8日(木) 予定


気になるまちに行ってみよう 2
キッチンカープロジェクト 5
ほか


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